ライザップは未経験者を仕組みで育てて、 建設業の人手不足を変えられるのか
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ライザップが挑戦する建設業の人手不足
今回のテーマは「ライザップ、異業種からの建設業参入」です。ダイエットや筋トレを事業としていたライザップが、この4月に建設業への本格参入を発表しました。RIZAPグループの中の子会社として「RIZAP建設」に改称し、グループ社員約500人を建設人材へリスキリング(再教育)する計画です。この背景には、コンビニジム「chocoZAP」の急成長を支えた店舗開発ノウハウと、建設業界が抱える深刻な人手不足や資材高騰といった社会課題があります。
ライザップはchocoZAPを短期間で1900店舗超に拡大する中で、「物価・資材高騰」「人材不足」「多重下請け構造」という建設業界の課題に直面しました。そこで、専門業者や工場の情報をデータベース化し、「直取引」「直雇用」「直発注」の3つの“直”を実現する独自の供給網を構築。商社や元請けを介さずに資材調達や工事発注を行うことで、中間コストを削減し、工期短縮と品質向上を実現しました。
そして、このノウハウを外販事業として展開し、物件選定から施工までを一括受注するサービスを開始しています。半年間の試験運用では、出店コストを25~30%削減し、工期を半減。すでに186件の施工実績と約30億円の売上を達成しました。そのため、さらにグループ社員をこの成長分野である建設事業へホワイトカラー職の500名を振り向けるというのです。
育成面では、これまでトレーナー育成で培った教育手法を応用し、「RIZAP建設育成アカデミー」を設立。座学、実技、現場研修、資格取得支援を通じて未経験者を戦力化します。
将来的にはさらに事業領域を拡大し、日本の建設人材を継続的に育成・供給するプラットフォームの構築を目指すとしています。
(参考文献)
「RIZAPが「建設業」に本格参入 社員の1割をブルーカラーに転換、狙う店舗開発のOS化」 Forbes JAPAN(2026/4/17)
未経験者を育てる仕組みは、建設業の未来を変えるのか
ライザップの建設業参入の記事を読んで、私は大きな可能性を感じる一方で、「本当に人材不足の解決につながるのだろうか」という興味も湧きました。
建設業界では長年、「人がいない」「若手が入らない」「入っても辞めてしまう」という課題が語られてきました。その結果、多くの会社が採用活動に力を入れています。しかし実際には、採用以上に難しいのが育成です。
特に建築設備施工管理の仕事は、知識だけでは務まりません。図面を読み、現場を理解し、多くの職人や協力会社と調整しながら工事を進めていく必要があります。経験を積みながら身につける要素が非常に多く、一般的には一人前になるまで数年かかると言われています。
そのため、これまでは「先輩の背中を見て覚える」「現場で経験しながら成長する」という育成方法が中心でした。しかし近年は、そのやり方だけでは若手が育ちにくくなっています。
背景には、働き方改革による労働時間の制限があります。以前のように長時間現場にいることが難しくなり、若手が経験できる機会そのものが減っています。また、管理職や中堅社員も多忙化しており、じっくり教える時間を確保しにくくなっています。
こうした状況を考えると、ライザップが掲げる「育成の仕組み化」は非常に興味深い取り組みです。
ライザップはこれまで、トレーナーを短期間で育成する教育システムを構築してきました。誰が教えても一定の品質を保てるように、教育内容や評価基準を標準化してきた実績があります。
もしこの考え方を建設業にも応用できれば、これまで属人的だった教育が大きく変わる可能性があります。
一方で、私は建設業の育成にはもう一つ重要な要素があると考えています。
それは「現場での人との関わり」です。
施工管理の仕事は、人を動かす仕事です。図面や工程表はパソコンで学べますが、職人との信頼関係の築き方や、トラブル発生時の判断力、現場の空気を読む力は、実際の現場でしか身につきません。
つまり、教育プログラムだけでは不十分であり、「学んだことを現場で実践し、振り返る仕組み」が必要なのです。
私は若手社員の現場指導を行う中で、技術的な知識よりも、「相談できる人がいるかどうか」が成長速度を大きく左右することを何度も見てきました。
未経験者が現場で失敗するのは当たり前です。大切なのは失敗しないことではなく、失敗から学べる環境があることです。
そう考えると、これからの建設業に必要なのは、
「教育の仕組み化」と
「現場で支える仕組み化」
の両方ではないでしょうか。
ライザップの挑戦は、建設業界に新しい風を吹き込む可能性があります。異業種だからこそ持っている発想やノウハウは、私たち業界人が気付かなかった課題を解決するヒントになるかもしれません。
しかし最終的に人が育つのは現場です。
教育システムを整えるだけではなく、若手が安心して挑戦できる現場をつくること。教える人が育ち、学ぶ人が成長できる環境を整えること。その積み重ねこそが、建設業界の人手不足を根本から解決する道なのだと思います。
まとめ
ライザップの建設業参入は、単なる新規事業という枠を超え、建設業界の人材育成のあり方そのものに一石を投じる挑戦と言えるでしょう。
これまで建設業では「経験」が重視されてきました。しかし今後は、経験だけに頼らず、未経験者を計画的に育てる仕組みがますます重要になります。
そして同時に忘れてはならないのは、現場での人と人との関わりです。教育制度と現場の支援体制、その両輪が揃ったとき、建設業は人手不足という長年の課題を乗り越えることができるのではないでしょうか。
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