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「仕事ができれば許される」はもう通用しない

今回のテーマは「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」です。フキハラとは怒鳴ったり罵倒したりする直接的な攻撃ではなく、不機嫌な態度や無言の圧力によって周囲に精神的負担を与える“受動的な攻撃”です。一見すると性格や気分の問題に見えますが、立場の強い上司が継続的に行えば、職場の雰囲気を悪化させ、報告や相談がしにくい環境を生み出します。
最近では、このように新たなハラスメント概念が広がっています。

事例としては2025年、警視庁の課長職にあった男性警視正が、日常的に不機嫌な態度を取り続け、部下を萎縮させて職場環境を悪化させたとして「警務部長注意」の処分を受けました。この人物は、オンラインカジノ事件や退職代行サービスを巡る事件など、多くの難事件を解決してきた実績ある仕事のできる管理職でした。しかし、どれほど成果を上げていても、不機嫌な態度によって組織に悪影響を与えた点が問題視されたのです。

この記事では、「○○ハラ」という名称そのものよりも、その行為が組織運営にどのような悪影響を及ぼすかが重要だと指摘しています。警視庁は今回、法的なパワハラには当たらないと判断しながらも、「管理職として適切な職場環境を作れなかった」として処分しました。これは、従来のように「仕事ができるなら多少の問題行動は許される」という考え方に明確な線引きをしたことを意味します。

これまで日本の会社では、成果を上げる人物に対して、威圧的な態度や感情的な振る舞いが黙認されることも少なくありませんでした。しかし現在は、コンプライアンス意識の高まりにより、実績だけでは評価されない時代になっています。管理職には成果だけでなく、感情をコントロールし、対話を通じて信頼関係を築く能力が求められています。

つまり現代の組織では、「結果を出すこと」だけでなく、「適切なプロセスで組織を動かすこと」が重視されるようになったのです。不機嫌さを放置すること自体がマネジメント能力の欠如と見なされる時代に入り、リーダーには共感力や冷静なコミュニケーション能力が不可欠となっています。

(参考文献)
「どんなに優秀でもこれ以上は「一発アウト」…警視庁が身をもって示した「不機嫌ハラスメント」処分の境界線」PRESIDENT Online(2026/3/13)

https://president.jp/articles/-/110304

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怒鳴らなくても現場は壊れる 不機嫌な管理者が安全を崩す

建設現場においても、上記のような施工管理者がいます。それが、どのような悪影響が起こるのかを紹介します。多職種・多業者が連携しながら安全・品質・工程を同時に成立させる現場では、「感情的な圧力」は想像以上に深刻なリスクになります。

まず最も危険なのは、「報告が止まる現象」です。職人や若手社員は、不機嫌な管理者に対して「怒られたくない」「機嫌が悪そうだから後で言おう」と考えるようになります。その結果、本来すぐ共有すべき施工不良、ヒヤリハット、工程遅延、資材不足などの情報が上がらなくなります。建設現場では小さな異常の放置が重大災害につながるため、これは極めて危険です。

次に、「安全管理の形骸化」が起こります。KY活動や朝礼での確認が形式だけになり、作業員が本音を言わなくなります。本来であれば「その足場は危ない」「重機動線が危険だ」と指摘すべき場面でも、現場の空気が悪いと誰も口を開かなくなります。これは労働災害発生率の上昇に直結します。

さらに、「品質低下」も顕著になります。現場では細かな納まりや施工条件の確認が不可欠ですが、不機嫌な管理者には質問しづらくなります。その結果、「たぶんこれでいいだろう」という自己判断施工が増え、手戻り工事や隠れた施工不良が発生します。特に重量機器搬入、楊重作業、大がかりな外構埋設配管工事などは、コミュニケーション不足が重大品質事故につながります。

また、「若手離職」も加速します。現在の建設業界は慢性的な人手不足ですが、不機嫌な上司の下では若手スタッフや派遣社員が育ちません。「質問しづらい」「相談できない」「常に空気が悪い」という環境では、若手は短期間で辞めていきます。

対策として最も重要なのは、「心理的安全性」を現場管理の基準に組み込むことです。具体的には、①報告した人を責めない②ミスを共有した人を評価する③打合せで双方向対話を行う④管理者教育に感情コントロール訓練を導入する、ことが有効です。

特に建設現場では、「怒鳴らない管理」が安全管理そのものになります。現場代理人や施工管理者は、単に現場を回す人ではなく、「報告しやすい空気を作る責任者」であるという認識が必要です。

また、会社側も「仕事ができるから問題なし」という評価基準を改める必要があります。どれだけ工程短縮能力や原価管理能力が高くても、現場の雰囲気を悪化させ、報連相を止める管理者は、長期的には事故・品質不良・離職を増やす存在だからです。

これからの建設現場では、「工程を守れる管理者」より、「人が安心して動ける現場を作れる管理者」が高く評価される時代になります。安全・品質・工程の土台にあるのは、結局のところ“健全なコミュニケーション”なのです。

まとめ

「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」は、経営の視点で見ると、性格の問題ではなく、会社の利益と安全を損なう経営リスクです。不機嫌な施工管理者がいると、現場では報告・相談が止まり、施工不良や事故の兆候が見えなくなります。その結果、事故、品質低下、工期遅延、若手離職が増え、会社の信用と利益を失います。

今の時代は、「仕事ができれば許される」では通用しません。建設会社に必要なのは、現場を回す管理者ではなく、「安心して報告できる現場」を作れる管理者です。これからの建設会社の人材は、利益だけでなく、心理的安全性やコミュニケーション能力も重要な評価基準になります。

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宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役

首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(研修・現場教育支援・コーチング)を提供しております。大学卒業後、35年間中堅サブコンにおいて現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「売上・利益の向上」を支援しています。

【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)