若手に現場を任せられない ――その原因は「企業風土」にあるかもしれない

2026.09.14

「企業風土」が会社の業績を左右する

今回のテーマは「企業風土」です。

参考にしたのが、山口周氏の『いまだ「昭和型」が残る日本における「ニュータイプ」リーダー選出の重要性』です。
企業の業績を左右するものというと、商品力や営業力、経営戦略などを思い浮かべます。しかし、それらと同じように重要なのが「組織風土」です。

組織風土とは、会社のビジョンが社員に浸透しているか、公平に評価されているか、社員が意見を言えるか、新しいことに挑戦できるか、といった組織の健全性を指します。
そして、その企業風土に大きな影響を与えるのが、経営者や管理職のリーダーシップです。
従来型のリーダーは、「指示・命令」「上からの一方通行」「信賞必罰」によって組織を動かしてきました。

一方、これからのリーダーには、「会社や組織の方向性を示す」「部下の意見を聞く」「挑戦したい人に仕事を任せる」といった役割が求められます。
重要なのは、単に部下に優しくすることではありません。

指示すべきところでは明確に指示し、任せるべきところでは任せる。状況に応じてリーダーシップを使い分けながら、社員が自ら考え、行動できる組織をつくることです。

「昭和型」が間違っていたわけではない

建設業では長い間、「経験と上下関係で仕事を覚える」という文化が続いてきました。

現場ではベテランの経験や勘が重視され、若手は先輩の仕事を「見て覚える」。そして、上司から言われたことを正確に実行することが評価されてきました。

私自身も、そのような環境の中で仕事を覚えてきた世代です。
ですから、私は「昔の育て方が間違っていた」とは思いません。
当時は、現場に今より多くの人がいました。若手が先輩の仕事を見る時間もあり、失敗しながら経験を積む余裕もありました。
つまり、「見て覚える」という育て方が成立する環境があったのです。

ところが、現在は状況が大きく変わりました。
人手不足が進み、2024年問題による労働時間の制約もあります。管理職やベテラン自身が多くの仕事を抱え、若手に付きっきりで仕事を教えることも難しくなっています。

昔と同じ育て方を続けていても、同じようには人が育たなくなっているのです。
変えるべきなのは、過去への評価ではありません。
時代と環境が変わったのだから、人の育て方も変える。
その発想が必要なのではないでしょうか。

「育つ人を待つ」から「育つ仕組みをつくる」へ

その一例が、北海道の内池建設です。
同社では、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という経営理念を掲げ、会社の役割を利益の追求だけでなく、社員一人ひとりの成長と豊かな人生を支えることだと位置付けています。

人材育成についても、「育つ人を待つ」のではなく、「育つ仕組みをつくる」という考え方を重視しています。
入社時の基礎研修から3年目研修、管理職向けマネジメント研修までを体系化し、資格取得も会社が支援する。さらにメンター制度や上司との1on1を通じて、技術だけでなく将来の目標や成長課題についても継続的に話し合っています。

つまり、経験任せのOJTから、会社として計画的に人を育てる教育へ転換しているのです。
また、業務の見える化や工程管理の改善、DXの活用によって残業時間を削減しながら、生産性を高めています。
これは単なる「働き方改革」ではありません。
人を育て、生産性を高め、その成果を会社の成長につなげる。企業風土そのものを変える取り組みだと思います。

サブコンにとって「若手が育たない」は経営課題

ここで、設備工事会社、いわゆるサブコンについて考えてみたいと思います。
多くの会社で聞くのが、

「若手にまだ現場を任せられない」 という声です。
もちろん、施工管理には経験が必要です。

しかし、入社5年、7年と経験を積んでも、何か問題が起こるたびに上司へ判断を求める。自分で考えて工程を組めない。施工図や見積、協力会社との打合せでも、上司の確認がなければ前へ進められない。
このような状態が続けば、問題は若手一人の能力だけでは済みません。

その若手をフォローする課長や所長が、いつまでもプレイヤーとして現場の細部まで関わらなければならなくなるからです。
管理職が本来行うべき、人材育成、複数現場の管理、顧客との関係づくり、組織運営などに使う時間がなくなります。

そして、若手に現場を任せられなければ、会社として担当できる現場の数にも限界が出てきます。

つまり、「若手が育たない」という問題は、人事や教育だけの問題ではなく、会社の生産性や受注力にもつながる経営課題なのです。

企業風土は「制度」だけでは変わらない

では、研修制度を整えれば人は育つのでしょうか。
私は、それだけでは十分ではないと思っています。
企業風土は、人事制度や研修制度だけでつくられるものではありません。
むしろ、毎日の現場で上司が若手にどう接しているか。その積み重ねによってつくられていきます。

例えば、若手が、

「これ、どうしたらいいですか?」

と聞いてきたとします。

そのとき上司が、

「こうしろ」

とすぐに答えるのか。

それとも、

「君はどうしたらいいと思う?」

と一度問い返すのか。

この小さな違いは、数年後には大きな違いになります。
いつも答えを教えてもらっている若手は、上司に答えを求めるようになります。
一方、自分で考えることを求められてきた若手には、少しずつ自分なりの「判断軸」ができてきます。

もちろん、間違った判断をすることもあります。
だからこそ、上司が確認し、フィードバックする。
「考える → やってみる → 振り返る」
この繰り返しによって、初めて「任せられる施工管理者」に近づいていくのではないでしょうか。

「現場を任せられる人」を何人つくれるか

これからのサブコンにとって、人材育成の目標は単に「研修を何回実施したか」ではないと思います。
大切なのは、

「一つの現場を任せられる人材を、会社として何人育てられるか」

ではないでしょうか。

若手が自分で考える。
自分なりの判断軸を持つ。
一つの現場を任せられるようになる。

そうすれば、その上の管理職は、より広い視点から複数の現場や組織を見ることができます。
結果として、会社として対応できる仕事の幅や量も広がります。
企業風土とは、少し抽象的な言葉に聞こえるかもしれません。

しかし、現場で考えてみれば決して抽象的なものではありません。
上司が若手にどんな問いを投げかけるのか。
どこまで仕事を任せるのか。
失敗したときに、どのようなフィードバックをするのか。

その一つひとつが会社の企業風土をつくり、やがて「人が育つ会社」と「なかなか人が育たない会社」の違いになって表れてきます。
これからの建設会社の競争力は、機械やDXだけでは生まれません。
自ら考え、判断し、現場を任せられる人材を育てられる企業風土。
それこそが、人材不足の時代におけるサブコンの大きな経営資産になるのではないでしょうか。

シエンワークスでは、建設業の現場に即した人材育成を通じて、「知識を教える」だけではなく、「自分で考え、判断し、現場を任せられる人材」を育てる支援を行っています。

若手・中堅社員の育成についてお悩みがありましたら、下部の「お問い合わせはこちら」からお気軽にご相談ください。無料相談を実施しております。

人材不足でお悩みのサブコン社長・経営幹部の方へ。サブコン専門 人材育成支援サービス 人材不足でお悩みのサブコン社長・経営幹部の方へ。サブコン専門 人材育成支援サービス

著者プロフィール

宮本 一英

宮本 一英

株式会社シエンワークス 代表取締役

首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(現場サポート・現場巡視・集合研修)を提供しております。35年間現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「安全・品質の向上」を支援しています。

【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者