「2024年問題」のその先へ――サブコンに問われる「任せられる人材」の育て方

2026.09.07

残業を減らした、その先にある課題

2024年4月、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。

それから約2年。

建設業界では、以前のように長時間労働を前提として現場を動かすことが難しくなり、「いかに残業を減らすか」という段階から、「限られた時間と人員で、いかに現場を動かすか」という段階へ移りつつあります。

今回参考にした『「2024年問題」その後の現在地 ~中部圏建設業における労働投入量の推移~』からも、一人当たりの労働時間が減少する一方、人手不足や工期調整といった課題が依然として続いていることが分かります。

これまでの建設現場では、工程が遅れれば残業や休日出勤で取り戻すことができました。

しかし、それができない現在では、着工前の工程計画、発注者や協力会社との調整、施工中の段取りなど、一つひとつの仕事の「質」を高めることが求められます。

つまり、2024年問題の次に企業が考えなければならないのは、単なる残業時間の削減ではなく、「生産性をどう高めるか」という問題ではないでしょうか。

サブコンにとっての「生産性」とは何か

では、設備工事を担うサブコンにとって、生産性を高めるとはどういうことでしょうか。

DXを導入することも一つでしょう。

施工管理アプリやタブレットを活用し、写真を現場で整理・共有する。図面や工程表をクラウド上で確認する。遠隔臨場などによって移動時間を減らす。

こうした取り組みは、確実に現場の効率化につながります。

しかし、私は長く施工管理に携わり、現在は若手社員の現場サポートを行う中で、もう一つ重要な生産性の問題を感じています。

それは、

「その仕事を任せられる社員が、社内に何人いるのか」

という問題です。

例えば、若手社員に小さな工事の見積書を作らせるとします。

一から十まで上司に聞かなければ作れない社員と、自分で図面を確認し、数量を拾い、協力会社と打ち合わせをして、一度自分なりの見積書を完成させてから上司に確認を求める社員。

同じ一人でも、会社にとっての戦力としては大きな違いがあります。

これは見積だけではありません。

施工図、工程調整、材料手配、職人との打ち合わせ、施工確認、試運転、引渡し。

施工管理の仕事には、日々さまざまな判断が求められます。

こうした仕事を「自分で考えて進められる人」をどれだけ増やせるか。

私は、これからのサブコンの生産性を考えるうえで、非常に重要な視点だと思っています。

若手が育たないと、管理職の時間がなくなる

若手が一人で仕事を進められないことは、単に「若手の生産性が低い」という問題ではありません。

その仕事を確認し、指示し、ときにはやり直す上司や先輩の時間も使っています。

例えば、本来であれば複数の現場を統括し、顧客との調整や原価管理、部下の育成などに時間を使うべき所長や課長が、若手の図面や見積書、施工計画を一つひとつ細かく確認している。

このようなことは、多くの会社で起きているのではないでしょうか。

もちろん、若手を育てる以上、確認や指導は必要です。

問題は、その状態がいつまで続くかです。

入社1年目は細かく教える。

2年目には一部を自分で判断させる。

3年目には小さな仕事を任せてみる。

このように少しずつ任せる範囲を広げていかなければ、いつまでたっても上司が若手の仕事を抱えることになります。

若手が一つでも多くの仕事を自分で考え、判断し、最後の「確認」だけを上司に求められるようになる。

それだけでも、上司の仕事は大きく変わります。

つまり、人材育成による生産性向上とは、若手一人の仕事を速くすることだけではありません。

若手が成長することによって、その上にいる中堅社員や管理職の時間まで生み出すことなのです。

「人がいない」だけが問題なのだろうか

建設業では、人手不足が大きな経営課題になっています。

若手の採用が難しい。
採用しても定着しない。
ベテラン社員が退職していく。

こうした問題は確かにあります。

しかし一方で、私はもう一つ考える必要があると思っています。

それは、

「人がいない」のではなく、「任せられる人が足りない」のではないか。

ということです。

社員が30人いても、現場を任せられる社員が10人しかいなければ、会社が同時に動かせる現場には限界があります。

反対に、若手や中堅が成長し、これまで上司が抱えていた仕事を一つずつ任せられるようになれば、会社全体として対応できる仕事の量は増えていきます。

これは単なる教育の問題ではありません。

受注できる仕事の量、管理職の負担、残業時間、施工品質、そして会社の利益にもつながる経営上の問題です。

「採用すること」と同じくらい、「今いる社員をどこまで戦力化できるか」を考える。

人材不足の時代だからこそ、この視点がますます重要になるのではないでしょうか。

自ら考えて現場を動かせる人材を育てる

では、「任せられる人材」をどのように育てればよいのでしょうか。

私は、作業のやり方だけを教えるのではなく、「考え方」を教えることが重要だと考えています。

「この図面から何を確認する必要があるのか」

「なぜ、この順番で施工するのか」

「次の職種が作業しやすくするためには、何を先に決めておく必要があるのか」

「このまま施工したら、どのような問題が起こる可能性があるのか」

こうした問いを投げかけ、自分で考えさせる。

そして、小さな仕事から実際に任せてみる。

朝礼の進行でも、一つの区画の管理でも、小規模工事の見積でも構いません。

自分で考え、実行し、結果についてフィードバックを受ける。

この繰り返しによって、少しずつ「自分で判断できる範囲」が広がっていきます。

同時に、報告・連絡・相談も重要です。

任せるということは、放っておくことではありません。

自分で判断してよい範囲と、上司に相談すべき範囲を理解し、問題が起こる前に報告できる。

そこまでできて初めて、上司も安心して仕事を任せられるようになります。

DXだけでは生産性は上がらない

今後、建設現場ではさらにDXが進んでいくでしょう。

施工管理アプリ、クラウド、BIM/CIM、遠隔臨場など、さまざまな技術によって仕事は効率化されていきます。

しかし、どれだけ便利なツールを導入しても、それを使う社員自身が「次に何をすべきか」を判断できなければ、現場全体の生産性は大きく変わりません。

DXは、人に代わってすべてを判断してくれるものではありません。

だからこそ、

「段取りを考える力」
「周囲と連携する力」
「問題を予測する力」
「自分で判断する力」
「DXを使いこなす力」

こうした能力を持つ施工管理者を、会社として計画的に育てていく必要があります。

2024年問題の次に問われるもの

2024年問題によって、建設業は「長く働いて現場を納める」という働き方から変わり始めました。

これから必要なのは、単に残業を減らすことではありません。

限られた時間の中で、どうすれば仕事を前に進められるのか。

そのためには工程を見直し、DXを活用し、無駄な仕事や手戻りを減らしていく必要があります。

そして、それと同じくらい重要なのが、人を育てることだと私は考えています。

若手が一つの仕事を任せられるようになる。

中堅社員が一つの現場を任せられるようになる。

その結果、所長や管理職が本来やるべき仕事に時間を使えるようになる。

その積み重ねが、会社として対応できる現場を増やし、限られた人員でも利益を生み出せる組織につながっていくのではないでしょうか。

これからのサブコンに問われるのは、

「社員が何人いるか」だけではなく、「任せられる人材が何人いるか」。

2024年問題のその先にある生産性向上とは、設備やシステムだけの問題ではなく、「人をどう育てるか」という経営課題なのだと思います。

シエンワークスでは、建設現場で若手社員と一緒に考え、実際の仕事を通して「自ら考え、判断し、現場を動かせる人材」を育てる現場サポートや、建設業に特化した人材育成プログラムを提供しています。

若手をどのように育てればよいか、管理職の負担をどう減らせばよいか、任せられる人材をどう増やしていけばよいか。

そうした課題をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

著者プロフィール

宮本 一英

宮本 一英

株式会社シエンワークス 代表取締役

首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(現場サポート・現場巡視・集合研修)を提供しております。35年間現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「安全・品質の向上」を支援しています。

【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者