大型現場で経験を積んでも、施工管理全体が身につくとは限らない ― 一つの設備を「計画から引き渡しまで」学ぶ技術研修 ―
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大型現場の増加で変わってきた若手・中堅社員の育成
最近、複数のサブコン会社から、よく似た技術研修についてご相談をいただきました。
対象となるのは、若手から中堅の施工管理社員です。
研修内容は、受水槽・加圧給水ポンプ廻り、排煙設備、中央給湯設備など、一つの設備にテーマを絞り、その設備について施工管理の一連の流れを学ぶというものです。
こうしたご相談が続いた背景には、現在のサブコン各社が抱える共通した人材育成の課題があるように感じています。
近年、サブコン各社では大型現場を受注するケースが増えています。
大型現場には多くの施工管理者が配置され、それぞれが役割を分担して現場を管理します。大規模な工事だからこそ経験できることも多く、若手社員にとって貴重な経験の場であることは間違いありません。
その一方で、仕事が細分化されることによる育成上の課題もあります。
入社してある程度の年数が経過した中堅社員でも、ナンバーツー、ナンバースリーという立場で上司の指示を受けながら、一部分の業務を担当するケースが少なくありません。
職人さんへの指示、材料の手配、工程の確認など、目の前の仕事を確実に進める力は身についていきます。
しかし、それだけでは一つひとつの知識や経験がつながらず、「一つの設備を完成させるために、自分は何を考え、何を準備し、どのような順番で現場を動かせばよいのか」という施工管理全体を俯瞰する力が身につきにくい場合があります。
経験年数を重ねることと、施工管理全体を経験することは、必ずしも同じではない。
現在の若手・中堅社員の育成を考えるうえで、この点は重要な課題ではないでしょうか。
「知っている」から「施工管理できる」へ
そこでシエンワークスでは、一つの設備を題材として、施工管理の最初から最後までを一連の流れとして学ぶ技術研修を進めています。
目的は、単に設備についての知識を増やすことではありません。
研修で学んだ内容を実際の現場で再現し、仕様やルールに則り、ミスなく、品質を担保した施工管理ができるようになることを目指します。
例えば、「受水槽・加圧給水ポンプ廻り」をテーマとした場合、研修では次のような内容を扱います。
1.設備システムと関連する法令・基準を理解する
まず、受水槽や加圧給水ポンプ単体の知識だけでなく、建物全体の給水システムの中で、それぞれの設備がどのような役割を担っているのかを理解します。
同時に、施工管理を行ううえで必要となる法令、仕様、基準などについて確認します。
現場で「このように施工することになっている」と覚えるだけではなく、なぜその仕様やルールが必要なのかまで理解することが、応用できる技術力につながります。
2.設計図・仕様書を読み込み、施工条件を把握する
施工管理は、現場に機器や材料が入ってから始まるものではありません。
設計図や仕様書を読み込み、設備の条件を把握するところから始まります。
機器の仕様、配置、配管ルート、搬入経路、設置スペース、保守点検スペースなどを確認し、本当にその計画で施工できるのかを考えます。
また、より施工しやすく、品質やコストの面でも合理的な方法がないかというVEの視点も必要になります。
設計図に描かれたものをそのまま施工するのではなく、施工管理者として一度自分の頭で考える習慣を身につけることが重要です。
3.施工図・施工計画図・施工要領書を理解する
実際の工事に入る前には、施工図、施工計画図、施工要領書など、さまざまな図面や書類が必要になります。
大型現場では、これらを一人の施工管理者がすべて作成するとは限りません。
大切なのは、自分で作成していない場合でも、その内容を理解し、「なぜこのような計画になっているのか」「現場では何を確認すればよいのか」を把握していることです。
書類を作ることそのものではなく、書類に書かれている内容と実際の施工を結びつける力を身につけてもらいます。
4.材料拾い・手配と他工事との調整を考える
施工図などから必要な材料を拾い出し、適切な時期に手配することも施工管理の重要な仕事です。
さらに、設備工事は自社だけで完結するものではありません。
建築工事、電気工事、自動制御工事など、さまざまな工事との取り合いがあります。
誰に、何を、いつまでに確認するのか。
工事が始まってから問題に気づくのではなく、施工前に問題を予測して調整する力が必要になります。
5.現場で施工と品質を管理する
実際の施工段階では、機器の設置、配管、支持方法、弁類、振動対策、メンテナンス性など、多くの確認事項があります。
ここで重要なのは、職人さんへの指示や工程の「追い回し」だけで終わらないことです。
設計図、仕様書、施工図、施工要領書など、それまでに確認・計画してきた内容と実際の施工を照らし合わせながら、要求された品質が確保されているかを管理します。
計画したものを現場で形にし、その品質に責任を持つ。
これが施工管理者の重要な役割です。
6.試運転・試験・検査までを施工管理として捉える
設備は、取り付ければ完成ではありません。
施工後には試運転を行い、計画した性能が発揮されているかを確認します。
必要な試験を実施し、その結果を記録し、社内検査や客先検査にも対応します。
施工中の管理と試運転・検査を別々の仕事として考えるのではなく、最初の計画段階から最終的な性能確認までを一つにつなげて考えることが大切です。
7.書類をまとめ、引き渡すところまで経験する
試験記録や検査記録を整理し、必要な完成書類をまとめ、最終的に設備を引き渡します。
施工管理の仕事は、工事が終わったところで終わるわけではありません。
計画から施工、試運転、検査、書類作成、引き渡しまでを一連の流れとして理解して初めて、「一つの設備を施工管理した」といえるのではないでしょうか。
一つの設備を深く学ぶことが、他の工事にもつながる
この研修で目指しているのは、「受水槽に詳しい社員」を育てることだけではありません。
一つの設備について、
システムを理解する
→ 法令・仕様を確認する
→ 設計図を読み込む
→ 施工を計画する
→ 材料を手配する
→ 他工事と調整する
→ 現場を管理する
→ 試運転・検査を行う
→ 書類をまとめて引き渡す
という施工管理の流れを一度しっかりと身につければ、その考え方は別の設備にも応用できます。
例えば次に排煙設備を担当するときにも、「まず何を確認すればよいのか」「どのような計画が必要なのか」「誰と調整しなければならないのか」という施工管理の基本的な考え方は共通しています。
中央給湯設備でも、その他の設備でも同じです。
設備が変わっても、施工管理の基本となる「型」は応用できる。
だからこそ、最初から広く浅く多くの設備を学ぶのではなく、一つの設備を題材にして、計画から引き渡しまでを深く経験することに意味があると考えています。
現場代理人、そして次の管理職を育てるために
私自身、若い頃に小さな現場を一人で任された経験があります。
分からないことを上司や職人さんに聞きながら、それでも最後は自分で考え、判断して現場を進めました。
その経験が、その後の施工管理の基礎になったと感じています。
現在の大型化・分業化された現場では、同じような経験をすべての若手社員に与えることは難しいのかもしれません。
だからこそ、研修の中で一つの設備を丸ごと任されたような経験をつくりたい。
「この設備を自分が任されたら、何から始めるのか」
そう考えながら学ぶことで、バラバラだった知識を一つの施工管理の流れとしてつなげてほしいと思っています。
そして、この力は若手・中堅社員の現在の仕事だけに必要なものではありません。
施工管理全体を俯瞰し、自分で考え、判断し、品質を担保しながら現場を動かす力は、現場代理人になるために必要な力です。
さらに現場全体を見ながら、人や仕事を動かす経験は、その先の管理職へステップアップするための素養にもつながっていきます。
一つの設備を施工管理できるようになる。
そこから、さまざまな設備へ応用する。
そして、一つの現場全体を任せられる施工管理者へ成長する。
シエンワークスでは、受水槽・加圧給水ポンプ廻り、排煙設備、中央給湯設備など、個別の設備を題材としながら、その先にある**「自分で考え、現場全体を管理できる人材」を育てること**を目指して、技術研修を提供していきたいと考えています。
著者プロフィール
宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役
首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(現場サポート・現場巡視・集合研修)を提供しております。35年間現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「安全・品質の向上」を支援しています。
【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者



