お役立ちコラム

建築関連 本の紹介 「建設業界 DX革命」

「建設業界 DX革命」 小柳卓蔵 著

建設業界におけるDX化がストーリーで読める

DX(デジタルトランフォーメーション)という言葉をここ数年でよく聞くようになりました。 そもそもDXとは、どういうことなのでしょうか?
ウィキペディアによりますと、

DXとは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説である。2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱したとされる。

とあります。建設業界ではDXの導入が遅れていると言われていましたが、最近では清水建設がNTT東日本と提携し、建物運用のDXを図るOSを開発し建物への実装を開始しました。具体的な詳細については知ることができませんが、建設業界でも少しずつですが、
DXの波がそこまで来ているという感じがします。

今回ご紹介する本は、建設業界でのDX化の具体的な導入事例が物語形式で紹介されていて、地方の建設会社の若き3代目社長が父親から会社を引継ぎ、会社をよりよくしていこうという情熱が伝わってきます。

建設業界を変えたいという若き3代目社長の夢

著者である3代目社長は、前職は金融関係の会社で5年間勤めていました。家業は長男が継ぐことが決まっており、三男坊である著者は金融会社を退職し、法律への道を目指します。ところが長男が退職したことで、父を助けたいという想いから父親の会社に入社します。
入社して感じたことは、あまりにも会社のシステムすべてがアナログだったこと。また、営業会議も数字を使わない気合だけの会議でした。また、情報管理もずさんで個人で抱え込んでいる状態。著者はこの問題を社員ではなく、業界と会社にあると判断します。
そこで著者は、これからの時代は属人的な仕事はやってはならない、仕組み化することでだれでも経営や営業ができるように変えていくという決意をします。

稲盛塾でのアメーバ経営がDX変革の基盤に

経営を学ばなければ、と強い危機感を持った著者は、経営に関する本を片っ端から読み漁ります。その時出会ったのが、稲森和夫氏が書いた「アメーバ経営」でした。
そこから稲盛氏が主宰する盛和塾に入会し、経営とは何ぞやと言うことを学んでいきます。
「アメーバ」とは、社内の小集団組織で、独立採算の単位とされ、各アメーバのリーダーは経営者とみなされ、経営計画から実績管理、メンバー育成まですべて任されるのです。
著者はこのアメーバ経営こそが自分たちの会社には必要で、これが導入できなければ未来がないと決断し、社内に導入します。当初は反対だった古株の部長も、このやり方で実績が出ることで一気に協力的になったといいます。
このアメーバ経営により、現場の考えが反映された実践的かつ公平な人事制度を生み出し、のちに全社一丸となってDXに邁進する原動力となります。

「ホロストラクション」という新技術を建設業界に

父親が体調を崩し、著者は社長を継ぐことを決意します。父親から「社長は、お前がやれ」と言われたのです。社長になろうと思って入社したわけではなかった著者は真剣に悩み、「この会社で今後どのように社会貢献できるか。変化できない建設業でどうしたら唯一無二の存在で生き残れるのか」ということを考えます。
そこで思い立ったのが、「建設×IT」を成し遂げて先頭を切って走れば、業界も変わるのではないか、業界の将来にも貢献でき、次世代に誇りをもって伝えていくこともできる、と。
そのITの手段として著者が選択したのが「ホロレンズ」でした。「ホロレンズ」とは、ゴーグルのような形をした、マイクソフト社で開発されたMR(複合現実)デバイスです。
MRとは、AR(現実に情報を追加したコンテンツ)とVR(仮想の世界を体感する)の間に位置するもので、リアルとバーチャルをつなぐ技術としては最新のもとされています。
通常、建築物を計画するとき、模型を作ってイメージを膨らませ、施主に説明したりします。手間のかかる模型を作らなくても、また建物を建てる現地に行かなくても、このホロレンズがあれば、ほとんどのことが済んでしまう、手間と時間とコストの削減ができると著者は確信しました。
そして著者はマイクロソフト社と共に、このホロレンズを建設業界に取り入れる活動を進めて行きました。この建設会社での導入は、日本では日本航空株式会社に次ぐ2例目の活用事例だったとのことです。

これからの建設業界の改善をDX化で

著者は建設業界を次のように言います。
「業界は遅れていると言われる。しかし、裏を返せば伸びしろがあるということ。社長になるときに建設業の将来性に疑問を持ったが、葛藤するうちに、ちょっとIT化するだけで差別化できると気づいた。自分たちの会社は伸びしろだらけだった」と。 
つまり著者が言うのは、遅れている建設業界だからこそ、DX化できる未開の部分がいっぱいあって、それらにどうやって焦点を合わせて取り組んでいくか、そのことを決断して実行に移せる会社やグループが勝ち残っていくということだと思います。

まとめ

私が建設業界に入ったのは、もう何十年も前のこと。その頃の業界や現場のことを思い起こし現在と比較しても、大きく進化したとは思えません。3Dプリンターで建物が造れるようになったと言っても、実際のビル建設の現場では職人さんが一人ひとり手作業で施工しています。ユニット化も試されていますが大がかりなユニット化まではまだ時間がかかりそうです。
しかし、このDX化の流れは今後大きく建設業界が変わっていく序章のような時期なのではないかと思います。大手ゼネコンがその先陣を切ってDX化に取り組んでいるようです。
我々、設備業界に身を置く者にとっても、DX化できることはないか、効率的に施工や施工管理ができることはないかということを日々、自分自身に問いかけながら情報を集め、行動に移していくようにしたいと思います。

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宮本 一英
シエンワークス代表 ★サブコン社員が楽しく活き活きと働ける環境を作りたい!★★ 【資格】 ・建築設備士 ・1級管工事施工管理技士 ・消防設備士(甲種1類) ・空衛学会設備士(空調・衛生) 東京都出身/55歳にして自我に目覚める/筋トレ/ピアノ/人間観察/瞑想/お笑い
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