お役立ちコラム

建設業の人手不足倒産から建築設備の人材育成を考える

最近、新聞などを読むと建設業の人手不足倒産、さらには「2024年問題」で建設業の人手不足倒産が増えるといった記事を目にするようになりました。
その中で、興味深い記事を見つけました。

この記事に出てくる倒産したN建設の増川社長です。
この会社は、1960年代に創業し、道路や上下水道工事で発展しました。ピーク時に40名以上の従業員を抱えていたものの、公共工事の減少により業績が悪化し、最終的に倒産に至ります。

信用調査会社によると、N建設の倒産原因は「人手不足」ですが、増川社長はこの分類に疑問を呈しています。

増川社長は、現場作業員の不足や後継者問題に苦労した一方で、事業運営のずさんさも認めています。採算を度外視した新規顧客開拓や、工程管理の甘さが倒産の一因となったと述べています。また、経営が傾いた際に無理な新規開拓をせず、自社の実情に合った経営を目指すべきだったと振り返り、事業譲渡や廃業をもっと早い段階で検討すべきだったと後悔の念を示しています。

<引用>東洋経済オンライン:「今年は人手不足倒産が加速?「2024年問題」の要諦」

https://toyokeizai.net/articles/-/725934

つまりは人手不足が表面的な問題であり、深層には複合的な理由が失敗の原因なのです。
これは統計だけでは読み取れない実情が示唆されています。さらに言うと、人手不足だけの問題で会社は倒産しないのです。

仮に今回の増川社長が、現場作業員の不足や後継者問題で苦労する前に、人材育成を取り組んでいれば会社は存続していたかもしれません。

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「建設業界2024年問題」とは?

「建設業界2024年問題」とは、2024年4月までに「働き方改革関連法」を完全に導入しなければならない課題を指します。この法律は大企業や中小企業に段階的に導入され、特に建設業界には5年の猶予がありました。主要なポイントとして、時間外労働に上限が設定(月45時間、年360時間が基本、特例で年720時間まで)され、中小企業でも60時間超の時間外労働には割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。違反時には罰則があり、建設業界にとって労働環境改善は切迫した課題となっています。これはサブコンにおいても重要なターニングポイントと位置づけられます。

社員の育成が人手不足を解決する

人手不足や後継者問題の解決には、社員の育成が鍵となります。
具体的な方法として、以下のことが考えられます。

1)社員に会社内でどのような経験をさせ、ポジションを与えるのかを明確化するのが重要です。それにより社員は自身の将来を具体的に描きやすくなり、モチベーションの向上につながります。

2)定期的に個人の技術がどのレベルにあるのか、評価することが効果的です。
社員の現在の能力を把握し、必要な研修や支援を計画的に行うことで、個々の成長を促進します。特に、若手社員への早期の育成は、長期的な会社の安定に寄与します。

3)経験豊富な社員が若手社員を指導することで、彼らの能力向上と人間関係の構築を支援することも重要です。このプロセスは、経験豊富な社員にとっても自己の知識や経験を再確認する良い機会となります。

4)社内での異動やローテーションを積極的に行うことも推奨します。異なる部署や業務に携わることで、社員は多角的な視点を養い、柔軟な思考が身につきます。これは、将来のリーダーとして必要な資質を育む上で非常に有効です。

5)人材開発においては、定期的なフィードバックの重要性も忘れてはなりません。目標に対する進捗状況や課題について、定期的に発表を行い、適宜、指導やアドバイスを提供します。これにより、社員は自己の成長を実感し、より一層の努力を促されます。

6)社員自身が自己成長の重要性を理解し、自主的に学ぶ意欲を持つことが不可欠です。そのためには、経営層からの明確なメッセージや、学びを促す企業文化の醸成が求められます。社員一人ひとりが自身のキャリアに責任を持ち、積極的に成長に取り組む環境を整えることが、人手不足や後継者問題の解決につながるのです。

このような人材育成の取り組みが、人手不足倒産のリスクを少なくし、会社の持続可能な成長と健全な発展が遂げられるのです。

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まとめ

「建設業2024年問題」は社員の育成を考える絶好の機会です。
人手不足が理由の倒産は、表面的な問題であり、深層には複合的な理由が失敗の原因なのです。社員育成のため、これまでのやり方を踏襲するのではなく、社内や社外の知恵を集めて、再構築してみることが、原因の一つである人手不足倒産を回避することになると考えます。

 

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ABOUT ME
宮本 一英
シエンワークス代表 ★サブコン社員が楽しく活き活きと働ける環境を作りたい!★★ 【資格】 ・建築設備士 ・1級管工事施工管理技士 ・消防設備士(甲種1類) ・空衛学会設備士(空調・衛生) 東京都出身/55歳にして自我に目覚める/筋トレ/ピアノ/人間観察/瞑想/お笑い
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