お役立ちコラム

心理的安全性の高い建築現場が、事故を減らし、成長を促進する

旅客機の操縦は機長と副操縦士が分担します。一般的には操縦技術や状況判断能力の面で機長の方が副操縦士より格段に優れています。しかし、機長が操縦する時の方が墜落事故が起こりやすい傾向にあるのです。

これは、機長が操縦する際、副操縦士が意見を出しにくく、意思決定の品質が低下するためです。一方で、副操縦士が操縦する場合、機長はその行動や判断に対して自然にチェックし、必要に応じて異議を唱えることができます。この違いは、権力が偏在するシステムでは意思決定の品質が低下するという原理に基づいています。したがって、より効果的な意思決定を行うためには、両者の間で意見交換が活発に行われるべきです。

1970年代から1990年代後半にかけて、大韓航空が大きな事故を起こし続けた時期がありました。権力格差指標(上司に反対しにくい度合い)が大きいのが理由のひとつに上げられます。

権力格差指標の大きい韓国では、問題が起きても副操縦士が機長へ異議を唱えることが出来なかったのです。そして、韓国同様に権力格差指標が大きいのが日本なのです。

同様な問題が建設業、サブコン現場でも起こり得るのではないかと考え、この事例を取り上げました。このように上司に反対しにくい環境をどのように改善するのかが、今回のテーマ「心理的安全性の高い建設現場作り」です。

(参考文献)世界で最もイノベーティブな組織の作り方(光文社)著:山口周

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「心理的安全性」とは?

心理的安全性は、チームメンバーや組織内の個人が、リスクを負うことを恐れずに意見やアイデアを自由に表現できる環境を指します。

心理的安全性の高い環境では、従業員は失敗を恐れることなく新しいアイデアを試すことができ、誤りから学ぶことが奨励されます。このような環境は、創造性とイノベーションを促進し、チームの効率と生産性を向上させることが知られています。また、従業員が自分の意見や懸念を開示することを快適に感じることで、問題の早期発見や解決につながります。

心理的安全性を促進するためには、リーダーシップが重要な役割を果たします。リーダーは、オープンなコミュニケーションを奨励し、異なる意見を尊重し、失敗を学びの機会として捉える文化を育む必要があります。また、リーダーが率先して自らの弱みや失敗を共有することで、他のメンバーも自分の意見やアイデアを安心して表現できるようになります。

心理的安全性の欠如は、チームのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。メンバーが自己表現をためらったり、不安を感じたりすると、創造性が損なわれ、問題が放置されることがあります。したがって、組織のリーダーやマネージャーは、心理的安全性を構築し維持することに注力することが、組織全体の成功に不可欠です。

心理的安全性の高い建設現場とは?

心理的安全性の高い建設現場を作るための4つの主な因子は次のとおりです。これらの因子は、スタッフが安心して自分の意見やアイディアを共有できる環境を形成するのに不可欠です。

1.オープンな交流の現場

現場においてオープンで透明性のある交流を促進することが重要です。これには、意見やフィードバックが正直かつ前向きに交わされる環境作りが含まれます。
そのため、リーダーは、率先して率直な意見交換を行うべきです。また、スタッフの相互理解を深めるために、日常の業務の中でコミュニケーションの機会を増やすことも大切です。

2.相互尊重の現場

組織内の全員が互いに尊重し合う現場作りは、心理的安全性の確立に不可欠です。この尊重は、新入社員、若手社員であっても個々の意見や背景、能力を認めることから始まります。リーダーは、例え技術が未熟でも個々の貢献を評価し、先入観や経験則の判断、偏見に対して敏感である必要があります。

3.失敗許容の現場

失敗を犯したときに罰せられると感じる環境では、従業員は萎縮し、新しいアイデアや成長が阻害されます。失敗を学びの機会と捉え、それを共有し、改善につなげる環境を促進することが重要です。リーダーは、失敗を受け入れ、それを現場全体の成長のための糧とすることで、安全な環境を作り出すことができます。

4.助け合う現場

スタッフ一人一人が感じる感情や挑戦を理解し、互いにサポートすることは、心理的安全性を高めます。リーダーやスタッフ通しが共感を示し、サポートを提供することで、自分たちの感情や考えをオープンに共有することが容易になります。このような環境は、信頼と協力の強化にも寄与します。
これらの因子は相互に関連しており、一つ一つが現場内の心理的安全性のレベルを高めるのになります。このような現場は自然にできるものではありません。経営者や現場リーダーは、これらの原則を積極的に実践し、継続的に評価し、改善していく必要があります。

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現場の夕礼を利用し、心理的安全性を育む

弊社では「心理的安全性の高い現場作りの指導」を行っています。
サービスの一環として、現場スタッフによる夕礼のファシリテーターを弊社、宮本が務め、
スタッフ全員が意見を言える場を作り、心理的安全性を高め、現場の効率化を図る目的で取り組んでいます。
以前、実施した現場では、主任(現場代理人)、係員(入社4年目)、派遣社員(2人)の計4名のスタッフで、「現場の残業時間を減らすには」というテーマで意見を出し合ってもらいました。最初はみんな戸惑った様子でしたが、「あなたはどう思いますか?」と全員に意見を求めると、それぞれ一人ひとりが思い思いの意見を出し、残業時間を減らすための建設的なヒントがいくつか出てきて、有意義な時間でした。(参加者全員の感想)
こうした一つひとつの現場の試みから、少しずつ多くの現場スタッフ間での意思疎通が滑らかになり、心理的安全性が高まっていくことを目指しています。

心理的安全性の高い現場が会社の未来を創る

問題が起きても副操縦士が機長へ異議を唱えることができない、冒頭の事例のような建設現場では重大な事故が起こる可能性があります。

上司やベテラン社員に、若手社員が何も物が言えないような閉塞した環境では心理的安全性は確保できません。

心理的安全性の高い現場が事故を減らし、スタッフの成長を高めるのです。それだけではなく、このような風通しの良い職場が離職防止や残業を減らす対策など多くの課題解決へとつながります。

スタッフ一人一人が安心して発言し、互いに尊重し、助け合う現場環境が良い循環を生み出します。そしてその環境が会社の明るい未来を築くことになるのです。

まとめ

心理的安全性の高い建設現場は、オープンなコミュニケーション、相互尊重、失敗許容、助け合いを重視しています。これにより、従業員は自由に意見を述べ、成長し、協力し合える環境が形成されます。加えて事故減少、離職防止、残業削減など、多くの利点をもたらすのです。

つまりは心理的安全性の高い建設現場作りは、一見関係のない「建設業2024年問題」の人手不足の課題解決に大いに役立つのです。この機会にぜひ取り組んでみることが大切かと考えます。

 

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ABOUT ME
宮本 一英
シエンワークス代表 ★サブコン社員が楽しく活き活きと働ける環境を作りたい!★★ 【資格】 ・建築設備士 ・1級管工事施工管理技士 ・消防設備士(甲種1類) ・空衛学会設備士(空調・衛生) 東京都出身/55歳にして自我に目覚める/筋トレ/ピアノ/人間観察/瞑想/お笑い
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