お役立ちコラム

建築現場 設備事故撲滅対策、ヒューマンエラーを防ぐ取り組み

今年7月に東京新橋の飲食店で発生したガス漏れによる爆発事故から、建築現場での設備事故撲滅対策について考えてみたいと思います。

「2023年7月3日、東京 港区新橋のビルに入る飲食店で爆発があり、4人が重軽傷を負った事故で、店の1つ上の階にあるガス管の接続部分の一部がずれていたことが捜査関係者の取材で分かった。警視庁は接続部分からガスが漏れ出して引火した可能性があるとみて詳しい状況を調べている」 NHK NEWSWEB

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230705/k10014119041000.html#:~:text=3%E6%97%A5%E3%80%81%E6%9D%B1%E4%BA%AC%20%E6%96%B0%E6%A9%8B%E3%81%AE,%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%82%92%E8%AA%BF%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

この事故の原因は、このビルの3階で床工事をしている際、作業員が床から出ていたガス管の一部に触れ、このガス配管系統に何等かの力が加わり、ガスが漏れ、2階の飲食店で爆発が起きたとされています。2階の飲食店はガス契約をしておらず「調理は電気を使用していた」と店長が言っており、2階はガス管が通過していただけで、そのガス管に引火したと考えられます。
ニュースの情報からだけでは、詳しい状況と事実が分からないため、判断が難しいのですが、3階の床工事をする会社が、工事着手前に事前にガス会社に連絡をして、ガス配管付近で工事をするが問題ないか、あるいはガス会社に立会いをお願いする必要があるかなどの確認をする必要があったのではと考えます。

今回はこのような思いもよらない(事故が起きるまでは)事故が、特に改修工事におけるサブコンのどこかの現場で起きる可能性があることを懸念しながら、設備事故撲滅の対策を考えてみたいと思います。

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設備事故例

1.消火設備による死傷事故

2021年の東京・新宿の地下駐車場の消火設備から二酸化炭素(CO2)が放出され、作業員5人が死傷した事故があります。

新宿区のマンションの立体駐車場の地下1階で男性作業員6人が天井板の張り替え工事を行っていた際に起きました。天井に熱の感知器4個、煙の感知器8個の計12個があり、時間差があっても両方の感知器が作動すると、壁の高さ約1.5メートルにある噴出口8カ所からCO2が出る仕組みです。

これを作業員が複数の感知器を付けたり外したりした際、感知器が誤作動したとみられます。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/99595

2.改修工事における既設配管誤撤去

改修工事における、既設配管のうち撤去すべき配管以外の生きている配管を誤って切断したり、電気工事においても撤去している電気配管に近接している高圧ケーブルを切断して大事故になってしまったりと、一人の作業員の注意不足が原因だったと一言で片づけられない事故が無くならない状況です。

3.私の以前の現場での水の事故例

私自身が以前の現場で体験した水の事故例をご紹介しましょう。これは前のコラムでもご紹介しましたが、竣工前の受水槽清掃時に受水槽に入っていた水を抜き清掃をしようとしたところ、ピット内の水が溢れ、受水槽室とその隣の熱源機械室まで床上に水が上昇し10㎝くらいまで水が溜まってしまったという事故です。
そのコラムがこちらです。

受水槽での水の事故例

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設備事故撲滅のための3つのポイント

1.現場任せにせず、会社組織でチェックする体制

安全管理をどこまで現場に任せるかということがポイントになります。日々の安全書類の整備、安全朝礼、KYミーティング、安全設備の徹底、現場の安全巡回は、現場単位で責任を持って行っていくのは必要ですが、会社組織として安全管理体制を具体的にどうやって整えるかが重要です。
例えば、「重要工程」と言われる危険作業は会社ごとに定義付けされていて、その工事を実施する場合は、会社の承認を得てからでないと作業できない、というルールです。しかし、そのルールがあるにもかかわらず、小さい工事だから、あるいは工期が直近で急に決まり、会社の承認をもらう時間がない等で徹底されないケースも見受けられます。
こういうときに限って事故が起きる場合があるので、やむを得ないときは電話1本でもいいから上司に連絡するようにとしておき、組織内での連絡をスムーズに円滑に行えるような体制を作ることが必要です。

2.設備事故例を社内で集積し、共有する

設備事故は工事会社である以上、ゼロを目標にしてはいますが「人」が行っているものである以上、完璧は難しいものです。起きてしまった事故は、それを受け止め、再発防止のための対策を講じなければなりません。
そのために、実施されている会社は多いと思いますが、設備事故例のデータを集め管理し、それを全社員で共有するということが重要です。設備事故が起きた日時、場所、現場の状況、事故が起きた本質的な原因(原因の根本がずれている場合は注意し、社内で協議)、再発防止対策をシートにまとめ、全社員に回覧し集積していく。これを長年継続していくと、いくつかのパターンが見えてくるはずです。そのパターンごとに対策を要約し、各現場に事前に配布し周知することができます。

3.毎日の夕礼で安全の確認を

会社の組織としての体制は第一に大事ですが、最終の実行する部署である現場での細かな連絡と周知が疎かだと事故は起きてしまいます。現場での指示、連絡、意思疎通の方法としておすすめしているのが、夕礼です。ここで重要なポイントが「意思疎通」です。就業時間内での仕事の連絡はその都度行っていますが、そのときは指示、事実の確認が主になり、自分は今どう思っているか、こうした方がいいのでは、という意見が言いにくいと思います。
それを「夕礼」という時間を使って、自由に話し合える場を設けることが大きな狙いです。
この場を利用して、次の日以降の安全面での注意事項、対策を意識的に取り入れることで新しい視点、気づきが生まれ、危険の芽を摘むことができます。

設備事故を撲滅することで得られる未来

労災事故でも設備事故でも、ひとつ事故が発生してしまうとそこで少なからず工事、工程がストップしてしまいます。事故による損失は時間だけでなく、コスト、改修工事であればお客さんの信用という目に見えない重要なものも失ってしまいます。この1年事故が無かったら当たり前でみんな何とも思わないかも知れません。しかし、「設備事故をゼロに」を会社として毎日意識し、そのための行動を実行することが、社員の安全を守り、お客さんの信用を築いていく一歩なのでは思います。

まとめ

事故の原因として、多くの割合を占めるヒューマンエラー。建設業界に限らず、私たちが暮らすこの世の中のほとんどが「人」を介して成り立っています。だから、人のミスによるエラー、事故の確率を極限まで少なくしていく努力が必要です。建設現場での特に設備事故については、ヒューマンエラーで起こりうる可能性を無くす対策として、安全に対する組織体制づくりと現場での心理的安全性の確立についてご紹介しました。参考になれば幸いです。

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宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役

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【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)

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