お役立ちコラム

消火水槽の有効容量算出はフーチンがあると難しい

私がお手伝いさせていただいているクライアント様の新入社員研修の一環で「現場教育サポート」をしているというお話を前回しました。その教育サポートで、ある新入社員が
体験したエピソードをご紹介します。

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消火水槽がきれいな直方体ではない場合

その新入社員A君は上司から、ある新築現場の消火設備の着工届を出すにあたり、その中の一部の書類の作成を依頼されました。
その建物には屋内消火栓設備とスプリンクラー設備があり、それぞれの水源としての有効容量が決められています。その水源の有効容量の算出根拠が分かる書類を作成するように指示されました。
算出根拠が分かる書類と言っても一から作成するわけではなく、下図(水槽の平断面図)があり、説明の数式が書いてありますが、それが分かりにくい表現になっていたため、分かりやすく修正を加えてほしいということです。
消火水槽が直方体でシンプルな四角であれば問題はないのですが、隅にフーチンがあります。このフーチンがあることで、A君は頭を悩ませていました。まず、図面をあまり見たことがないため、平面と断面の見比べが難しいのと、そこから立体的なイメージが膨らまないこと、そして立体の容積の算出方法も小学校以来だからピンとこず、しかも文系出身のため脳が働かないようでした。

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2次元の図面を3次元に立体的にイメージするには

小学校や中学校で習った算数、数学の知識が建築設備業界では比較的多く出てきます。
ピタゴラスの定理、ベルヌーイの定理、ポンプの揚程計算、ダクトの静圧計算など。
今回のような単純な体積を求めたり、風速、水量を求めたりは日常的にあります。
新入社員がこの数学的な脳みそを働かせるには、もう一度小学校の算数の問題を解いてみるのもいいかも知れません。
また、平面図や断面図から頭の中で立体的なイメージをつかむための訓練としては、やはり毎日のように施工図を読み込み、現場と見比べてどのように配管されているか、ダクトはどういう納まりで吊られているかをよく観察することだと思います。現場の様子を漫然と見過ごさないことが必要です。

書類や図面を誰が見ても理解しやすいものにする

今回の書類のポイントは、誰が見ても理解できる見やすい書類ということでした。下図の
平面図と断面図に容積を求める過程の数式が書かれていますが、その数式が図の線に重なっていたり、フーチンの線が薄く、それ自体の存在感が薄かったりと、とても見やすい図面とは言えないものでした。新入社員としては、それがどうして見やすくない図なのかも判断できないでしょう。これについては経験が必要なので、見やすい図面、書類にするには、こういうところに注意するか、ということをアドバイスしました。

新入社員A君の苦悩と教育の本質

そもそも、消火設備の着工届の書類を下図があるとはいえ、上司が新入社員に修正させるというのも大胆だな、とは思います。それも、アバウトに概要だけ伝え、「あとは自分で考えて作ってみて、分からなければ聞いて」と言うものの、その上司も忙しくいろいろなところに出向いているので、なかなかA君も上司に聞けない状況です。
考え様によっては、その上司は新入社員の育て方のツボが分かっているのでは、とも思います。この上司のいいところは、「まずは自分で考えてみろ、分からないなりに」と、否が応でもやらざるを得ない状況を作って、新入社員に負荷をかけているところ。1から10まで事細かに教えてしまったら、自分で考えなくなります。しかし、今回のケースは、1だけ教えたが、少なくとも5まで行くための2や3が分からず、ストップしている状況。これでは、A君も戸惑うでしょう。若手社員育成の本質のところは、上司がいかに部下を育成し、成長させることに重点を置いているか、ということだと思います。

まとめ

何事も困難な状況こそが、その人を成長させるのだな、と思います。消火水槽が素直な
直方体であったら、何もこんなに悩まなくて済んだのに。そこにフーチンがあろうとは。
フーチンがあったことで、A君はいろいろなことを学びました。平面と断面から立体的な
イメージを持てたこと、小学校の算数のおさらいができたこと、誰が見てもきれいで分かりやすい図や書類の意味がわかったこと。その上司の方に感謝しましょう。

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宮本 一英
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【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)

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