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建設現場におけるレジリエンスを考える
4月は新入社員を期待と不安を抱えて、迎え入れるサブコンの経営者や人事担当者も多いことかと思います。そして、ここ毎年恒例のように話題となっているのが、新入社員が入社初日で辞めたエピソードや退職代行サービスのニュースです。
このような新入社員のみならずベテラン社員まで、最近注目される研修用語として、「レジリエンス(回復力)」があります。これは、変化の速いビジネス環境と不確実性の時代に、効果的に対応するための社員の能力が重要視されているためです。社員はストレスや逆境から早く立ち直り、状況に適応する力を身につける必要があるからです。
また、メンタルヘルスの意識が高まり、会社は従業員の精神的なウェルビーング(幸福感)をサポートすることで、生産性の向上と労働力の維持を目指しています。レジリエンスが高い職場は、チームワークと持続可能なパフォーマンスが向上します。これにより、会社の業績向上に寄与するため、注目度が高くなっているのです。
あなたの会社の新入社員や若手社員のレジリエンス、つまり逆境に強い心を養うためには、彼らが経験する失敗をどのように処理し、学びに変えるかが重要です。
具体的には、「学習性無力感」という概念を理解し、それに対抗する方法を教えることが求められます。学習性無力感とは、失敗を経験することで無力感に陥り、その結果、他の領域でも失敗するかもしれないという恐怖を抱くことです。これを防ぐには、失敗を冷静に分析し、理解することが必要です。
失敗は大きく三種類に分類されます。
第一に、「予防できる失敗」であり、これは不注意や準備不足が原因です。
第二に、「避けられない失敗」であり、これは業務プロセスや技術的な問題から生じます。第三に、「知的な失敗」であり、新しいアイデアや実験が原因で起こります。
これらの失敗に対処する方法として、まず失敗をこれらのカテゴリに分類し、不必要な自責の念を持たないことが挙げられます。さらに、各種失敗に適切に対応し、それを学習の機会とすることが重要です。例えば、予防できる失敗は、原因を理解し、同じ過ちを繰り返さないための学習が必要です。避けられない失敗の場合は、仕事の手順を見直すことが有効です。
また、失敗を乗り越えた経験は、「ポスト・トラウマティック・グロース(PTG)」、つまりトラウマ後の成長を促すことがあります。
これは逆境を経験したことで人が強くなる現象です。失敗からの回復を促すためには、一人の時間を設け、過去の逆境体験を振り返り、それをどう乗り越えたかを客観的に考察することが有益です。そして、困難を乗り越えた瞬間の気づきは、レジリエンスの向上に繋がります。
これらのアプローチは、新入社員や若手社員が失敗から学び、自身のレジリエンスを強化するための鍵となります。教育担当者はこれらの知識を活用し、若手社員が困難に直面した際に役立つレジリエンスの技術を教えることが求められています
<引用>PHP人材開発:「新入社員や若手社員がレジリエンスを高めるには? 失敗から立ち直る3つのステップを解説」(2023.8.9)
https://hrd.php.co.jp/hr-strategy/od/post-1257.php
従来の現場のOJTだけではレジリエンスの向上には限界がある
サブコンの建設現場での従来のOJTは、技術や作業手順を習得するのには効果的かもしれませんが、レジリエンス(回復力)の向上には限界があると考えられます。以下、その理由について詳しく説明します。
1)反復的な作業の強調
従来のOJTは特定の作業やプロセスの繰り返しを通じて技術を教えることが多いです。しかし、この方法では予測不能な状況やストレスが高い状況への適応力を育むことが難しく、これがレジリエンスの核心部分です。
2)限定されたフィードバック
建設現場では、上司や先輩からの即時かつ具体的なフィードバックが不足している場合が多くあります。レジリエンスを高めるには、失敗から学び、それに基づいて改善する過程が重要ですが、OJTではこのような機会が限られることがあります。
3)ストレス管理の教育不足
建設現場のOJTでは、しばしば作業技能の習得に重点が置かれ、精神的な健康やストレス管理技術に関する教育がおろそかになることがあります。レジリエンスを身につけるためには、ストレスに対処し、感情を管理する方法を学ぶことが不可欠です。
4)環境の多様性の欠如
多くの場合、OJTは比較的予測可能な環境で行われます。しかし、レジリエンスは変化や不確実性が常に存在する環境でこそ養われることが多いため、OJTだけではそのようなスキルが育ちにくいです。
レジリエンスを向上させるためには
現在の、このような現場でのレジリエンス向上の限界を考慮し、社員の継続的なメンタル回復力を習慣的に継続させることが必要です。
そのためには、従来のOJTに加えて、シミュレーショントレーニング、メンタルヘルスのサポート、多様な状況への適応力を試す機会などを提供することが有効です。
例えば、ピット内配管作業の施工管理を初めて任される若手社員に対して、まず自分でその作業の計画(工程表作成→建築との打合せ→材料拾い→仮設材の段取り→職人の手配)を立てさせます。実際に施工が始まったら、適宜上司が部下に対して進捗確認とトラブルが起きたときの声かけが必要です。その声かけが「そのトラブルに対して、A君はどう思っているの?、どう対応したらいいと考えている?、自分はこのトラブルから何を学んだ?」を、意識して問いかけるようにします。失敗に対して叱責するのではなく、本人自身に考えさせることが重要で、そのことで自分事として考える習慣がつきます。
これにより、社員は単に技術を習得するだけでなく、困難な状況に対処し、それを乗り越える力も身につけることができるようになります。
まとめ
サブコンの建設現場で行われる従来のOJTは、技術や作業手順の習得には有効ですが、レジリエンスの向上には限界があります。
レジリエンスの向上には、OJTに加えて、シミュレーショントレーニングやメンタルヘルスのサポート、多様な状況への適応力を試す機会の提供が有効です。これにより、社員は技術の習得だけでなく、困難に対処する力も身につけることができます。
なによりも、社員がレジリエンスの力をつける前に辞めてしまわないようにする取り組みが必要なのです。当社は、社員に寄り添いながら、レジリエンス向上を考慮したサポートプログラムを提供しています。
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