お役立ちコラム

CAD操作の先の「納まる施工図」を書くための研修

建築設備の新入社員研修あるいは入社2~3年目の若手社員研修で、T-fasやRebroなどのCADソフトを使った作図研修を行っている会社様は多いと思います。
CADソフトの操作上での使い方、作図における基本的なルールなどの知識を学ぶという目的で実施されているようですが、この最初の1回の研修で終わりになっていないでしょうか。

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CAD操作だけでは施工図を書けるとは言えない

CADソフトの操作上の研修で一通り、操作のやり方は学んだ、コマンドの意味やレイヤの考え方を理解した、とそれだけでは施工図その他の図面は書けません。特に施工図は、設計図をそのまま肉付けすればいいというものではなく、設計的なミスを探したり、メンテナンスを考えたり、物理的に建築の仕上げの中に納めたり、他設備との取り合いを考えたりと、いろいろな要素が絡み合い、書いていくものです。
CADソフトの操作を習得したからと言っても、施工図が書けることが10とすると、まだ1のレベルに留まっているというところでしょう。レベル2からいかに施工図の書き方を
学んで自分のものにしていくか、ということが課題になってきます。
私がお手伝いさせていただいているクライアント様の若手社員でも、なかなか現場で施工図を書くチャンスが無いことと、上司が一つひとつ丁寧に施工図の書き方を教える時間が取れないというのが実情です。この中でどのように若手が施工図を書いていくための環境を整えていくかを考えてみたいと思います。

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研修で納まる施工図の考え方を学ぶ

納まっている施工図、職人に渡して質問が戻ってこない施工図、設計事務所やゼネコンから赤チェックが戻ってこない施工図が書けるようになるまでには、やはりある程度の年月を要しますし、施工管理の経験も必要です。それが先ほどのレベル10だとすると、レベル5くらいまでの基礎的な施工図の考え方、知識を学ぶ必要があります。つまり、その基礎がしっかり身についていれば、6から10へのレベルアップは短期間で達成できます。
それを現場でのOJTに期待するのは現場ごとの状況もあり難しいでしょう。そこで、集合研修という機会を設け、この基礎的な施工図の納まりを主体にした勉強会を実施しました。

1.図面を書く上での基礎知識

今回の研修の冒頭で「シンボルテスト」を実施しました。これは、給排水衛生設備の給水(上水、中水)、給湯(往、還)、消火、汚水、雑排水、通気などの管種あるいは継手、弁類、水栓等の名称を左の欄に、その右の空欄にシンボルを記入するというものです。
経験の浅い2年目の社員なので、知っていても3割できればいいという感じでした。
これは、たくさん書けなくてもいいので、現状自分がどのくらい知っていて書けないものが多くあるということを認識してもらうことが目的です。このテストによって、まず作図する上での基礎知識を学んでもらうきっかけを作りました。
また、作図上の要点や寸法等の表示方法についても基礎的なことなので、一つひとつ意味や目的を確認しながら、解説しました。
図枠の中にある変更、訂正日付、縮尺、押印欄や、図面のレイアウトについてキープラン、器具表、三角法による断面図の表記方法など、我流で書いてしまうことが多いものについても一般的なルールとして解説しました。
また、通り芯のバルーンの大きさや立管表示(右斜め上→左斜め下)についても見やすさという点で注意することがポイントです。

2.設計図の読み込み

設計図を読み込み、設計上の問題点の抽出、排水管が設計図のルートで勾配が適正に取れそうか、便器の排水やPS立管が梁に干渉していないかなど、設計図の段階でおおよそ施工図に起こす前に目星をつけることが必要です。いきなり施工図の、ある一部分から書き出すといいうことをすると木を見て森を見ず状態になり、ある程度施工図が進んだ段階でまた最初から書き直しということになりかねません。
排水管の勾配の話でいうと、例えば1階床下ピット内配管で延々と横引き配管が延びており、ピットから外部に出るときに梁貫通ができるのかとか、既存の公設桝に接続するときに高さが確保できるのかとかといった、納まり以上にお金にも影響を及ぶような内容の
問題点が潜んでいる場合があります。これは極端な例ですが、施工図を書く前段階での
大きな視点で設計図を読み解いていくことの視点を身に着けることは必要です。こういった例を図でホワイトボードに書きながら解説しました。

3.建築との取り合い

やはり、設備施工図を書く上で一番重要なのは、建築との取り合いです。先ほど説明した
梁貫通の構造制限もそうですし、梁下と天井面とのフトコロ内で耐火被覆と天井下地間をどのくらいで考えて有効寸法を割り出すか、またPSの現状の幅や奥行の空間の中で、配管の施工が問題なくでき、かつバルブなどの操作は可能かといったことを考慮して書かなければなりません。これらの内容は確かに現場で経験しながら、身体感覚で身に着けることと言えますが、基礎知識として寸法的なことを知っておくと作図がスムーズに進みます。

研修で学ぶメリットと期待できる効果

研修において体系的に施工図作図の要点を学ぶことによって得られるメリットとして2つ上げられます。一つは、実際に現場で施工図を書く段になって一から先輩に教わりながら書かなくてはならない手間が省けるという点。忙しい先輩も一つひとつ丁寧に教える時間はありません。「テキスト見ながら書いてみて」と言う感じでしょう。事前に基礎が理解できていれば、先輩からの指導も少なくて済みます。
もう一つは設計図を読み解いたり、施工図を書く上での目的を現場ではなかなか教えてくれないという点。現場では時間のない中で施工図を書かなくてはならないので、設計図の読み方や施工図は何のために書くのかといった目的のところは、事細かに教わらないものです。これも長い時間をかけて自分で理解し学んでいくものということで私自身も経験を積んできました。しかし、今のような人手不足の状況でその時間を待っていたのでは、
現場の効率も上がりません。これらのことから、研修で体系的に納まる施工図を書くための知識を学ぶことで、現場で実際に施工図を書くとき、ある程度の精度が望めるレベルの
効果が期待できます。

まとめ

「納まる施工図が書ける」というのは、ある程度の現場施工管理の経験と実際に携わった現場の数とその枚数によることは間違いありません。しかし、画家がキャンバス上にイメージ段階でのスケッチやエスキースを描くように、若手社員が早い段階で基礎的な知識、設計図の見方、施工図の目的、考え方をしっかり理解することで、現場の実戦での作図がより品質のよいものになると思います。

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宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役

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【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)

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