建築あるいは建築設備に関する本、現場での部下の教育や組織マネジメントに関する本などを紹介するコーナーです。
今日のブックレビューは、
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
岩崎 夏海著 です。
顧客は誰か?
現場管理をするうえで、設備の現場所長、現場代理人は施主、設計事務所、ゼネコン、協力会社、そして部下たちをいかにマネジメントするかによって、その真価が問われると言っても過言では
ありません。
現場でのマネジメントを考えるとき、参考になるのが「もしドラ」に書かれている、本家本元の
ドラッカーの「マネジメント」のエッセンスです。このエッセンスを高校野球の女子マネージャーみなみがどうやってチームのマネジメントに取り入れ、実行に移していくかがこの本に書かれていますが、この物語の内容が実は現場のマネジメントにも有効に活用できるなと読みながら感じました。
第一のエッセンスは、
「顧客は誰か?」という問いです。ドラッカーは、
企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。
この問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。
と述べています。
この本では野球部の顧客が求めているもの、『感動』を顧客にあたえることが、野球部の定義だと
しています。そして、顧客は高校野球ファンだけでなく、高校野球に携わる先生、学校、東京都、
高野連など関係する人、組織すべてだと言っています。
なるほど、では現場におけるサブコンの所長の顧客とはだれでしょうか。
前出した施主、設計事務所、ゼネコン、協力会社、部下すべてが顧客と考えると、今まで嫌だと思ったり、管理するのが面倒だと感じたりしていた相手に対して、思いやりの気持ちが生まれ、自分の気持ちが整理されるのではないでしょうか。
働く人たちに成果を上げさせる
第二のエッセンスは、ドラッカーは、仕事には「働きがい」が必要であると言い、
働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのために、
①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が不可欠である
と書かれています。
主人公のみなみはマネージャー仲間の夕紀に対して、最も重要な仕事の一つである「マーケティング」を一任し、部員たちからの感想を伝え、さらには学習を促すようにしました。
さて、現場所長であるあなたは部下や協力会社に対してどのように成果を上げさせる工夫をしますか?ドラッカーが言うところの3つの項目を現場でのシチュエーションに当てはめてみましょう。
例えば、若手社員にはワンランク上の現場管理を任せ、日頃の業務に対して適宜フィードバックを与え、学習する環境を作るなど、今まではあまり意識していないこともあったはずです。
イノベーション
第三のエッセンスはイノベーションです。
企業の第二の機能は、イノベーションすなわち新しい満足を生み出すことである。
企業は常によりよくならなければならない。
本書では、みなみが考えるイノベーションは、高校野球の古いもの、陳腐化したものを捨てていくこととして、「送りバント」と「ボール球を打たせる技術」を挙げました。これらを捨てることで、高校野球を変えようとしたのです。
現場でのイノベーションは何があるでしょうか?
新工法、施工手順の簡略化、手順の逆転など可能性としてはありですね。あるいは、部下の教育方法を変える、協力会社への発注方法を変える、品質管理方法について新しいツールを使うなど、いろいろ考えられます。
イノベーションと聞くと何か画期的なすごいものと考えがちですが、決してそのような大それたものではなく、ちょっと視点を変えるだけで新しいものが生まれると考えると、試してみようと思えて来ます。
まとめ
「もしドラ」はずいぶん前にヒットし、映画化もされ一世を風靡した本です。今、改めて読み返してみると、ドラッカーのマネジメントエッセンスが随所に出てきて、女子マネージャーみなみの
奮闘ぶりが健気でつい応援したくなります。今回は現場のマネジメントに置き換えて考えてみましたが、まったく縁がなさそうな女子マネージャーが「もしドラッガーを読んだら」の仮説は、仕事をするうえでの何かのヒントになりそうです。
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