航空現場の事故ゼロの取り組みを建設現場に
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ヒューマンエラーは“仕組み”で減らせる─CRMの本質
今回は「航空現場の事故ゼロの取り組み」の事例で「CRM(Crew Resource Management)」です。これは、航空業界で生まれた「チーム全員で安全を守るためのコミュニケーションと判断の仕組み」です。技術だけに頼らず、遠慮なく意見を言い合い、情報を共有し、役割を明確にすることで、ヒューマンエラーをチーム全体で補い合います。
航空事故の多くが技術の問題ではなく、伝え方の誤解や遠慮、役割の思い込みなど、人と人の“すれ違い”によって起きていました。そこで、「機長が優秀なら大丈夫」という考えをやめ、乗務員全員で危険に気づく仕組みをつくったのがこのCRMです。
CRMの考え方は、建設現場でもそのまま役に立ちます。まず大切なのは「誰でも危険を止められる雰囲気づくり」です。航空では、副操縦士でも機長に「それは危険です」と言います。建設でも、若手作業員や協力会社の人が、監督や職長に対して「今の作業は危ないです」と言える現場が理想です。
そのためには、朝礼で所長や監督が「危ないと思ったら、ためらわず作業を止めてください。指摘してくれた人には必ず感謝します」と明言し、実際に指摘が出たときは絶対に怒らず、「教えてくれて助かった」と言葉で伝えることが大切です。
次に、CRMでは「具体的な伝え方」がとても重要です。あいまいな表現は誤解を生みます。建設現場でも「足場がちょっと危ないです」では人によって受け取りが違いますが、「3階南側エリアで作業している配管屋さんの立ち馬が段差で斜めになっています。フラットな作業床になるよう指示します。」と言えば、誰が聞いても状況がはっきりわかります。
朝礼やKY活動の中で、「あいまい→具体的」への言い換え練習をしていくと、現場の伝達レベルが一気に上がります。
また、航空では「状況認識をチームで揃える」ことを大切にします。どこを飛んでいて、天候がどうで、どんな危険があるかを全員で共有します。建設現場でも同じで、今日の作業内容、他職の作業、危険箇所、風の強さなどを全員で共通認識にしておくと、予想外の事故を防ぎやすくなります。職長や監督だけがわかっている状態は危険なので、「今日の作業で危ない場所」「気をつける時間帯」「他の班とぶつかる作業」などを朝礼でわかりやすく説明することが必要です。
CRMの中心には「チェックリスト文化」もあります。航空では、離陸前に必ず複数人でチェックリストを読み上げながら確認し、ミスを仕組みで防ぎます。建設現場では、高所作業や玉掛け作業など、事故につながりやすい場面でこれを応用できます。「安全帯よし」「玉掛よし」「親綱よし」と声に出して確認し、できれば二人でチェックするだけでも、見落としは大幅に減ります。
さらに、CRMの実践には「ブリーフィング(事前の短い打合せ)」と「デブリーフィング(終わった後の短い振り返り)」が欠かせません。航空では、飛行前にその日の流れ・注意点・役割を全員で共有し、飛行後に数分だけ振り返ります。建設現場でも、朝礼を読み上げだけで終わらせず、「今日の作業で心配なことはありますか?」「危ないと思う場所はどこですか?」と全員に一言ずつ発言してもらうだけで、危険の早期発見につながります。終休憩時のミーティングでは、「今日ヒヤッとしたこと」「次に気をつけたいこと」を一つずつ話し合い、次の日の作業に反映させていきます。
まとめると、CRMは「安全を一人の責任にしない仕組み」です。建設現場で活用するには、誰でも指摘できる雰囲気づくり、具体的で誤解のない伝え方の習慣化、全員で状況を共有する朝礼、高リスク作業のチェックリスト運用、そして短い振り返りの継続がポイントです。これらを組み合わせることで、航空業界のように「チーム全員で事故を未然に防げる現場」をつくることができます。
危険を止める勇気を育てる現場へ─建設版CRMの実践法
建設現場でCRMを実践するための方法です。行動として定着させるためには、トレーニングが欠かせません。
まず必要なのは、誰でも危険を止められる雰囲気をつくるトレーニングです。朝礼の場で所長や監督が「危ないと思ったら必ず作業を止めてください。指摘してくれた人には必ず感謝します」と明言し、実際に指摘が出たときには全員の前で「ありがとう」と伝えることを毎日続けることで、若手や協力会社でも躊躇なく発言できる空気が育っていきます。
さらに、週に一度はロールプレイを取り入れ、若手が職長や監督に危険を伝える練習を行うことで、「言って良い」「言っても怒られない」という安心感を体験として身につけてもらうことが大切です。
次に重要なのは、曖昧な表現を具体的に変える伝達トレーニングです。「足場がちょっと危ない」などの曖昧な伝え方は、人によって解釈が異なり事故につながります。朝礼やKY活動の中で、監督が実例を示しながら「曖昧→具体」への言い換え練習を数分行い、作業員にもそれを実際に声に出してもらうことで、全員の伝達レベルが安定していきます。
具体的に言う習慣が身につくと、誤解や思い込みが減り、危険発見の精度が大きく向上します。
加えて、作業開始前の「ブリーフィング」と作業終了後の「デブリーフィング」を短時間で行う癖をつけることも大切です。朝礼で「今日の作業で心配なこと」や「危険だと思う場所」を全員が一言ずつ共有するだけで、事故の早期防止につながり、休憩時ミーティングで「今日ヒヤッとしたこと」や「明日気をつけたい点」を話し合うことで、現場は毎日少しずつ改善されていきます。出た意見を翌日の朝礼で必ずフィードバックすることで、現場が「学習する組織」として成長していきます。
このように、CRMを建設現場で活用するためには、危険を指摘しやすい空気づくり、具体的に伝える習慣の定着、全員の状況認識を揃える朝礼、チェックリストの声出し確認、そしてブリーフィングとデブリーフィングの継続という流れを日々繰り返すことが重要です。これらのトレーニングを積み重ねることで、「チーム全員で事故を防ぐ現場」を確実に築くことができるのです。
まとめ
CRMを経営者の視点で会社に根づかせるためには、「安全は現場単位ではなく組織で守る」という方針を会社の中心に据え、そして現場が毎日実行できるよう仕組みとして整えることが必要です。
現場から上がったヒヤリハットや改善提案は速やかに会社として対応し、現場の声が改善につながる仕組みを整備します。こうしたトップの姿勢と仕組みづくりを継続することで、チーム全員で事故を防ぐ組織文化が確実に根づいていきます。
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