お役立ちコラム

建築設備 工事写真撮影と写真整理のポイント

建築設備に限らず、建築工事現場では工程写真はとても重要な記録であり、また品質管理のツールでもあります。
私がお手伝いさせていただいているクライアントの新入社員でも、工事写真の撮り方が分からず、写真の枚数はたくさん撮ったのに、上司からダメ出しされ、使える写真が少ないと悩んでいる、という話を聞いたことがあります。
上司からの指示が明確でなかったのか、新入社員が一度聞いたことを十分に理解できていなかったのかは定かではないのですが、このコラムでは、工事写真の撮り方の目的から詳細の注意ポイントを解説しているので、お役に立てるのではないかと思います。

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工事写真のボツを少なくするには

「3階のA工区の天井内工事を工程ごとにいっぱい写真撮っておいて」と上司から指示があり、新入社員のB君はとにかく数多くの写真を撮っておこうと、片っ端から撮っていきました。そのうち天井工事が始まり、器具付けが終わった段階で、上司が「B君、この前の天井内写真を整理したいんだけど、どこのフォルダに入ってる?」
「3階施工の写真のフォルダです」
フォルダの中身を見た上司が一言、「ありゃあ、使えそうな写真がほとんどないな。どうする?これ」
B君が時間をかけて100枚を超える写真を撮ったにも関わらず、ほとんどがボツになるとは。

こういうことが起きないようにするには、どうすればいいでしょうか。数多く写真を撮っておき、使える写真だけを抜粋するのはいいのですが、できるだけ写真整理の時間も効率化したいですね。
効率的に写真を撮り、かつ写真整理も短時間で済ませるにはポイントが3つあります。
1.写真を撮る目的を意識する
2.ボツ写真を撮らない
3.写真整理は溜めない

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工事写真撮影は目的を意識しよう

もし、あなたがレストランの店員さんで、ある日家族連れのお客さんが来店したとしましょう。おじいちゃん、おばあちゃん、息子さん夫婦、お孫さん3人の全員の集合写真を撮ってほしいとお願いさせたら、どのように写真を撮るでしょうか。
7人の配置は本人たちで希望があるでしょうからお任せするとして、全員がアングルの中に納まっているか、全員の顔が写るか、全員が幸せそうな笑顔を作れるか、など素人のカメラマンなりにどうのようにこの写真を撮ったらお客さんに喜んでいただき、いい写真が撮れるかを考えます。
これが写真を撮る目的です。

工事写真も同様で、その写真を撮る目的を1回1回の場面で考えながら撮るということが重要です。
その工事の場面での目的が、材料搬入なのか、材料の仕様の確認なのか、天井内の工程内写真なのか、工種ごとの手順の流れなのか、品質管理の中のチェック項目なのか、耐圧試験の基準値の合否なのか、器具の取付け状況なのか、社内検査や消防検査の立会いなのか、完成形の写真なのか、まだまだいろいろな目的があります。
まず、これから撮ろうとしている写真は何の目的で撮ろうとしているかを考えることから始まります。それらの目的に合った写真を撮る必要があります。

例えば、コア内蔵形のエルボの仕様を確認する写真であれば、そのエルボの内蔵されているコアがよく見えるようなアングルでアップで撮るとか、バタフライ弁であれば、配管して見えなくなる弁体を開いた状態でアップで撮るなどです。
また、施工途中のフランジ配管のガスケットやダクトのパッキンなど、施工が終わってしまうと見えなくなってしまうものは、施工手順の写真の経過の中で撮りましょう。
目的があいまいだと、なんとなくボヤっとした印象の写真になり、この写真はいったい何が言いたいのか分からない、ということになります。
このように、工事写真を撮る目的をいつも意識して、現場に向かうようにしましょう。

ボツ写真を撮らないための撮影の注意ポイント

工事写真をいっぱい撮ったのはいいけれど、写真が多くありすぎて選ぶのに時間がかかる、その割にはボツになる写真が多すぎる、ということはありませんか。ボツの写真を多く撮らないためにはどうすればいいでしょうか。

背景に気をつける

目的の写真を撮ろうとすると、その周りの現場の背景や状況が意識から外れている場合があります。撮った自分は意識していなくても、あとで写真を確認すると、遠くで職人さんが安全帯を使わずに高所作業をしているとか、写真の隅に余計なものが写っていたり、不安全な設備があったりなど、せっかく目的の被写体はよく写っていても、周りの「不要物」で写真はボツになってしまいます。
写真を撮る際はその周りの状況もよく見て一呼吸おき、不要物を取り除いたり、アングルを変えたりしてから、写すようにしましょう。

常にベストショットを心がける

何枚も撮っておけば、あとで整理しながらいい写真を選べるから、と思っているといい写真は撮れません。先ほど目的をもって撮影することをお話しましたが、その意識が明確ならボツ写真はなくなると思います。常にベスショットを目指していれば、少ない写真で目的に沿ったいい写真が撮れます。
少数精鋭の写真たちであれば、あとでムダに多い写真から時間をかけていい写真を選ぶ手間も省けます。ポイントは、いかに工事工程の中で多くの場面、タイミングの写真をムダなく撮るかが重要です。

溜めない工事写真整理のコツ

忙しくなってくると、写真整理を先延ばしにしてしまい、竣工間際になってあわてて整理するということになってしまいがちです。最近は写真整理アプリがあって、作業が簡単になり、そう手間をかけずに整理できるようになっているようですが、それでもいい写真を選びまとめるということは必要です。

写真整理を後回しにせず、写真をフォルダ上に溜めないようにするにはどうすればいいでしょうか。施工管理の業務のすべてにおいて言えることですが、誰が、いつ、行うかを現場スタッフの中で明確に決めておき、スケジュールの中に組み込んで共有することが大事です。いつというのは、施工段階の節目、例えばピット内配管が完了した時点、1階の天井内の施工が完了した時点といったように、節目節目にチーム内で夕礼のときに確認するといいでしょう。
ポイントは、緊急でない作業も重要な作業は小まめに片づけていくことです。

おすすめ参考ガイドブック

工事写真を撮る際に、参考になるガイドブックをご紹介します。
国土交通省大臣官房官庁営繕部監修の「工事写真撮影ガイドブック 機械設備工事編 平成30年版」です。
施工のタイミングや工種ごとに参考写真が掲載されており、どういうポイントに注意したらいいかの解説もあります。

まとめ

今回は工事写真の撮り方及び写真整理のコツについて、お話しました。工事写真は新入社員が現場で最初に行う作業でもあります。しかし、新入社員でもできる簡単な作業と考えてはいい写真は撮れません。
本文でも紹介したように、家族連れのレストランでの店員の写真でも、お客様のためにベストショットを撮って差し上げようと、気持ちをそこに集中して撮っているはずです。
現場で工事写真を撮るときも、お客様に「品質のよい」写真を提出するという気持ちで撮れば、自ずといい写真が撮れるのではないでしょうか。

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宮本 一英
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【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)

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