「働き方改革」の本はアマゾンで検索してみると、たくさん出版されているのが分かります。さらに「働き方」というキーワードに広げると、数えきれないくらいの書籍名が並んでいます。それだけ、「働く」ということは人間の根源に関わる重要なことであり、関心のあることだということが分かります。
あまたある「働き方改革」の本の中で、建設業に特化した本が今回ご紹介する
「建設版 働き方改革 実践マニュアル 降籏達夫 著」です。
この本は建設関連の経営者や管理職の方向けに、建設現場の具体例を上げ、どういう視点で働き方を考えていけばよいかを提示してくれているので、みなさんの会社でも明日から
取り組める内容になっています。
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建設業の現状と課題
建設業で働く技能労働者の年齢層について、全体の25%を占める60歳以上の高齢者が10年後には大量に離職するけれども、一方で10代、20代は全体の11%に過ぎないため、
全体の労働者数は大きく目減りするとしています。
また、建設業で働く人たちの年間労働時間は全体の1,700時間に比べ、2,000~2,100時間の間を推移しており、それに比例し休日の取得状況も全体より少ないとあります。
このように、労働人口が減る中で、より一層現役の働き盛り世代の人たちの負担が増えていくという構図がはっきりしてくることが分かります。
今どきの若者を考える
これから建設業を担っていく最近の若者は、いったいどんなことを考えているのか。この本では、データを基に若者の特徴を説明しています。
ここでは、地位の向上より職場の人間関係を重視することや、困ったときは上司に従う素直さが長所であり、逆に弱点として、向上心の低下やプライベートと仕事の両立を重視する「自分ファースト」、あるいは短期間で転職してもいいと考えているなどの点が上げられています。これらを踏まえ、本書では若者の育成の方向性として、「分かりやすく説明する」
「小さな成長でも褒める」「ときには叱る」という取り組みを推奨しています。
つまり、建設現場でよく親方職人が「俺の仕事のやり方を見て盗んで覚えろ」というように、教えなくても自分で考えて覚えることが長らく業界の常識だった訳ですが、管理職の社員でもこういう教育?方法で鍛えられてきたのは確かです。
業界に根付いた従来の教育方法では、今の若者はついていけないというのが実情でしょう。
マズロー欲求から働き方改革を考える
本書では、マズロー欲求5段階を用いて、「働きやすさ」と「やりがい」の両輪から働き方を考えるということを提唱しています。
マズローの5段階欲求のうち、「生存安楽の欲求」「安全秩序の欲求」が「働きやすさ(衛生要因)」で「集団帰属の欲求」「自我地位の欲求」「自己実現の欲求」が「やりがい(動機付け要因)」に相当するとし、さらに6番目の欲求として、「社会、顧客貢献の欲求」を至高体験と位置づけて「やりがい」の最上位に追加しています。
この6段階の欲求を建設業でどのように高めていくかを解説しています。また、この内容を自社でチェックできるチェックシートが添付されているので、自社として今後どのくらい改革が必要かの見直しができるようになっています。
働き方改革案
マズローの5段階欲求+1の内容を章に分け、建設業に当てはめた改革案を提示しています。
・待遇良く働きたい
・安全に安心して安定して働きたい
・仲良く働きたい
・認められて働きたい
・成長して働きたい
・社会や顧客の役に立ちたい
この章立ての中で、私が重要だと考えるのは、「仲良く働きたい」と「認められて働きたい」の章で語られている、「社内に心理的安全性があれば生産性が上がる」ということです。
本書では、心理的安全性とは安全基地内にいると感じる気持ち、つまりメンバーの一人ひとりが安心して、自分らしくそのチームで働けることとしています。
心理的安全性を高める方法として、定期的な個人面談を推奨しています。面談では上司が部下に対して、聴くことに集中して部下から多くの情報を引き出すことに注力することが
求められます。そのために、上司は部下の成長を心から望み、教育する意義を考えて部下に接する姿勢が必要であると思います。
心理的安全性が確保されていれば、社員は認められたいという気持ちや自ら成長しようという意欲が生まれ、生産性が向上するという好循環になっていくということが、この本から読み取れます。
まとめ
働き方改革を建設業界に特化して書かれた書籍を紹介いたしました。今回は「やりがい」における「心理的安全性」について取り上げましたが、これはすべての業種、業態の「やりがい」に共通する内容なので、建設業だからということではありませんが、業界では特にこのことが疎かになっていると感じたので、あえて重点を置きました。
その他にも建設業ならではの時間効率化の手法や多能工の活用事例なども紹介されており、自社の状況にあわせてアレンジして活用できるのではないかと思います。
このコラムでも、私なりの働き方改革の持論を述べていますので、ご参照ください。
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