「大型現場に5年いても、段取りできない若手が育つ理由 ―指示待ちは本人ではなく「配置」の問題―
今回のテーマは「段取り力」(前編)です。
最近、クライアントのサブコンの工事幹部の方から、若手社員が伸び悩んでいるという相談を続けて受けました。ある幹部の方は、こう話していました。
「入社5年目になるのに、小さな改修工事も一人で任せられないんです」
話を聞くと、本人の能力や意欲に問題があるわけではありません。上司の指示があれば、きちんと仕事をこなせます。足りないのは、自分で先を読み、事前に準備する「段取り力」でした。そして、この力が育たない原因は、本人よりも会社の側にあることが多いのです。
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大型現場への配置が、若手から段取りの機会を奪っている
現在、サブコンが受注する工事は大規模なものが中心になっています。一つの現場に多くの社員を配置し、役割を細かく分担することで、大きな現場を回しています。
この体制では、工程を組むのも、資機材を手配するのも、職人と調整するのも、所長やベテランの仕事です。若手は与えられた範囲の作業を、指示どおりにこなせば仕事が終わります。現場は問題なく動きますが、若手が「明日のために自分で考えて準備する」経験は、ほとんどありません。
「大型現場に入れておけば、いろいろ経験できて育つだろう」と考えて配置していないでしょうか。実際には、何年大型現場にいても、段取りをする機会がなければ段取り力は身につきません。以前のコラム「大型現場で経験を積んでも、施工管理全体が身につくとは限らない」でもお伝えしたとおり、経験の量と身につく力は必ずしも一致しないのです。
この状態は、経営に三つの損失をもたらします。
一つ目は、受注の限界です。サブコンが受けられる仕事の量は、現場を任せられる技術者の数で決まります。若手が育たなければ、いつまでも同じベテランに頼るしかなく、受注を増やせません。
二つ目は、ベテランの負担です。若手の段取りを所長やベテランが代わりに行えば、その分だけ上司の仕事が増えます。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています(厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」)。上司が段取りを全部抱える体制は、もう続けられないのです。
三つ目は、協力会社との関係です。段取りの不備で、たとえば職人10人が30分待てば、合計5時間分の労務が失われます。常用であれば自社のコストになり、請負であれば協力会社の損失になります。これが重なると「あの現場は段取りが悪い」と言われ、職人を集めにくくなっていくのです。
段取りの差は「前日の夕方」に生まれる
段取りとは、単に予定を立てることではありません。明日の作業で何が必要になり、どんな問題が起こりそうかを先読みし、人・資機材・図面・安全対策をあらかじめ整えることです。
若手がつまずく場面は、ほぼ決まっています。たとえば、翌日に重量物を搬入する予定なのに、揚重機や搬入経路の手配が前日の夕方になっても決まっていない。あるいは、配管ルートを他業種と確認していなかったため、当日になってダクトとぶつかることがわかる。継手や支持金物の数を拾い漏らし、作業の途中で材料が足りなくなる。どれも当日の朝に気づいてからでは、もう手遅れです。
一方、段取りができる若手は、前日のうちに翌日の工程を確認し、必要な資機材と人員をそろえ、職長と作業内容をすり合わせておきます。その結果、当日の朝は最終確認だけで作業を始められ、職人は迷わず仕事に取り掛かれます。現場の生産性は、当日の対応力よりも「前日にどれだけ準備できたか」で大きく変わるのです。
私が若手に段取りを教えるときは、必ず「明日、職人さんの手が止まるとしたら、何が原因になりそう?」と聞きます。答えに詰まるうちは、まだ先が読めていません。この問いに具体的に答えられるようになると、若手の動きは目に見えて変わります。段取り力は才能ではなく、考える回数で決まるのです。
まとめ
若手の伸び悩みは、本人の資質だけの問題ではありません。大型現場で役割が細かく分かれ、指示どおりに動けば仕事が回る環境では、段取りを考える機会そのものがないのです。そしてその結果、受注の限界、ベテランの長時間労働、協力会社からの信頼の低下という形で、会社の利益に影響します。
だからこそ、経営者・幹部が決めるべきことがあります。若手を配属するときに「この現場で何を任せるか」をあらかじめ決めること。所長や現場代理人の評価に「部下を育てたか」を加えること。そして、任せた仕事を振り返る時間を、工程の中で確保することです。若手の育成は、現場任せにしていては進みません。会社が配置と仕組みで後押しすることで、初めて段取り力のある施工管理者が育つのです。
後編では、管理職が若手にどう任せ、どう問いかけるか、そして若手自身が身につけるべき習慣を、具体的に紹介します。
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著者プロフィール
宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役
首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(現場サポート・現場巡視・集合研修)を提供しております。35年間現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「安全・品質の向上」を支援しています。
【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者



