カスハラから社員を守り、工事の遅延と人材流出を防ぐ
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住民や店舗などの過剰な要求に備え、対策の仕組みを整える
今回のテーマは「カスハラ対策」です。2026年10月から法律でカスハラ対策が義務化されました。企業に対して、顧客や取引先からの悪質な嫌がらせ(カスタマーハラスメント)を防ぐための対策を取るよう法律で義務づけたのです。
これまでは、顧客から理不尽な要求や暴言を受けても、社員個人が対応し、我慢をしいるケースがありました。今後は、企業が社員を守るための仕組みを整え、組織として対応することが求められるのです。そして、これを放置すると会社にも重大な問題をもひき起こすのです。
建設現場では、周辺住民や店舗からの理不尽な要求によって、工事の進行や会社の経営に深刻な被害が生じるケースがあります。
例えば、夜間工事の騒音に不満を持った住民から、工事期間中のホテルの手配を求められ、応じられなければ工事を続けるなと要求された事例があります。現場責任者は1時間にわたって対応しましたが、合意に至らず、工事の中断や工程の見直しを余儀なくされました。また、道路工事で通行止めを説明した際、店舗から売上減少分の補償を求められたこともあります。
こうした過剰な要求への対応が長引くと、工事の遅延だけでなく、作業員や警備員の人件費が増加し、企業の利益を圧迫します。さらに、現場担当者は本来の業務に加えて、難しい交渉や苦情対応に追われ、精神的にも大きな負担を抱えることになります。実際に、こうした負担に耐えられず、若手社員が離職する事態も起きています。
<引用>
「連載『カスハラと建設業』」:建通新聞社
https://digital.kentsu.co.jp/cntts/spcntt/01JT2QSJA2KC42D3Q2SG2AKXP5
現場任せの苦情対応をやめ、会社全体でカスハラから社員を守る
現場でのカスハラ対策では、まず工事開始前に、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
周辺住民や店舗に対して工事の目的、期間、作業時間、騒音・振動への対策、交通規制などを丁寧に説明します。
特に、夜間工事や道路の通行止めなど、生活や店舗の営業への影響が大きい工事では、影響が生じる理由や問い合わせ先を明確に伝え、説明内容や相手の反応を記録しておく必要があります。
一方、理不尽な要求や威圧的な言動が発生した場合には、現場担当者だけに対応を任せず、上司や本社の担当部署に速やかに引き継ぐ仕組みを整えることが大切です。暴言や脅迫、長時間にわたる執拗な要求が続く場合には、複数人で対応し、必要に応じて話し合いを中断するなど、社員を守るための対応基準を明確にします。また、要求の内容や対応経過を記録することで、会社として適切な判断を行います。これが今後の同様のトラブルへの再発防止にもつながるのです。
店舗から売上減少分の補償を求められた場合などは、その場で安易に約束したり、一方的に拒否すると後にトラブルになるケースが多くなります。工事による影響の実態や契約条件、法的な責任の有無などを確認したうえで、会社として回答することが必要です。
正当な苦情や損害には誠実に対応する一方、根拠のない過剰な要求には、契約や事実に基づいて明確な姿勢を示すことが重要です。必要に応じて発注者や元請企業、法律の専門家とも連携し、現場だけで判断を抱え込まないようにします。
さらに、カスハラによる工事の中断や工程の遅延、作業員・警備員の人件費の増加を最小限に抑える必要があります。トラブル発生時の報告先や対応手順、工事の中断・再開の判断基準などを事前に定めておくことも有効です。発注者や本社との連絡体制を整え、現場で解決できない問題を速やかに協議できるようにすることで、被害の拡大を防ぎやすくなります。
そして、被害を受けた社員の心身を守ることも欠かせません。相談窓口を設け、被害を安心して報告できる環境を整える必要があります。合わせて、必要に応じて担当業務の変更や専門家への相談などを会社が支援するのです。
特に若手社員には、正当な苦情とカスハラの違いや、上司に対応を引き継ぐタイミング、記録の取り方などを具体的に教育します。そして、「すべてを自分で解決する必要はなく、困ったときには会社が守る」という姿勢を明確に伝えることが重要なのです。
まとめ
カスハラ対策は、社員を守るだけでなく、工事の遅延や追加人件費による利益の減少、若手社員の離職を防ぐための重要な経営課題です。
工事前には周辺住民や店舗への説明を徹底し、トラブルを未然に防ぐとともに、理不尽な要求が発生した際には現場任せにしてはいけません。上司や本社が組織として対応する仕組みを整える必要があります。
また、補償要求などには契約や事実に基づいて判断し、発注者や専門家とも連携しながら、工事への影響を最小限に抑えることが大切です。社員が一人で問題を抱え込まず、安心して働ける環境をつくることが、結果として企業の収益と人材を守り、安定した経営につながります。
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著者プロフィール
宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役
首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(現場サポート・現場巡視・集合研修)を提供しております。35年間現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「安全・品質の向上」を支援しています。
【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者



