社員の能力とやる気を引き出す方法として、コーチングが有効です。コーチングは、相手の自発的な行動を促すコミュニケーションスキルであり、指導者自身の成長にも応用可能です。
コーチングは、対話を通じて相手の能力ややる気を引き出し、目標達成をサポートする方法です。日本では2000年頃から注目され、企業の研修などで取り入れられています。背景には、パワハラの増加や、旧来型のOJTの限界が挙げられます。コーチングでは、相手を認め、話を聞き、質問を通じて考えを整理し、フィードバックを与えて行動を促します。
コーチングスキルの習得は、自己啓発にもつながります。受講者は自分自身について考え、相手を思いやるコミュニケーションを学びます。
若いうちからコーチングを学ぶことの意義は、コミュニケーションスキルの基盤を作り、社会人生活での有効活用につながるとされています。これは、年齢を重ねると人付き合いの「癖」が固まり、変化が難しくなるためです。若い時期に学ぶことで、人間関係を築くうえでの基本的な姿勢やスキルを習得することが可能です。
<引用>日本経済新聞:若手も学ぼう「コーチング」(2020/3/10)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56561130Z00C20A3EAC000/
「2024年問題」で建設業、サブコンではさらに人手不足が深刻になります。社員の能力ややる気を引き出し、離職を止めなければなりません。
特に新入社員、若手社員を採用し定着させられるかは、生命線とも言えるほど重大な課題となります。
そのため、新入社員、若手社員が突然辞めることがないよう、受け入れる会社側も対策を取る必要があります。そのひとつの方法として今回ご紹介するコーチングがあります。
管理職や先輩社員にコーチングの基本を学ばせる、あるいはコーチングのできる外部スタッフを活用することで新入社員、若手社員の話を丁寧に聞くことで、考え方を理解します。その上で相手の能力ややる気を引き出すのです。
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「コーチング」とは?
コーチングは、個人または組織が自身の潜在能力を最大限に引き出し、目標達成をサポートするプロセスです。このアプローチは、相手が自己認識を深め、解決策を見つけ、行動に移すことを促します。一般的に、コーチングは目標設定、問題解決、スキル開発、パフォーマンス向上に焦点を当てます。
コーチングでは、コーチは相手の話を傾聴し、質問を通じて彼らの考えや感情を探ります。これは、相手自身が持つ答えや解決策に気づくためのものです。コーチはアドバイスを与えるのではなく、相手が自身の問題を理解し、自らの力で解決策を見つけるよう導きます。
コーチングセッションでは、具体的な目標設定が重要です。目標が明確になると、コーチは相手がその目標に向かって進むための行動計画を立てるのを手伝います。
コーチングは、ビジネス、スポーツ、個人の成長など、さまざまな分野で応用されています。それぞれの分野で異なる特定のスキルや知識が必要になることもありますが、根本的な原則は同じです。自己認識の向上、目標達成のサポート、個人の潜在能力の最大限の活用に焦点を当てた、対話とフィードバックに基づくアプローチです。
今時の若手社員は何を考えているのか分かっていますか?
今の20代の若手社員は1990年代半ば以降に生まれ、Z世代と呼ばれています。この世代の特有の感覚や強みを生かすことが望まれている一方で、彼らと上司世代との間でのコミュニケーション不足が問題視されています。Z世代が本心を容易に見せないとされる理由は、彼らの育った社会情勢や教育システムにあります。彼らは自分の悩みや課題を内に抱え込み、容易に他人と共有しない傾向があります。
Z世代は「デジタルネイティブ」であり、インターネットを通じて情報を得ることに慣れていますが、人と直接コミュニケーションを取ることには苦手意識を持つことが多いのです。核家族で育った影響もあり、人間関係が浅い他人に自分の弱みを見せることが少ないのです。このため、彼らは上司や先輩に悩みを自己開示することが難しく、突然の退職につながることもあります。
上司世代は、部下と相互理解のためにコミュニケーションを取ることが重要ですが、コンプライアンスの観点から個人的な質問をすることは難しくなっています。代わりに、先輩たちが自分を自己開示することで、Z世代が自らの価値観や悩みを共有しやすい環境を作ることが推奨されます。
また、Z世代は内的動機を重視し、「やりたくない仕事」に抵抗を示しやすい一方で、自分の価値観に合致する仕事には地道に取り組む能力があります。彼らはデジタルネイティブとしての技術的な経験や、共創力が高いとされています。
最後に、Z世代の特性は彼らが育った社会的な環境や経済情勢、影響を受けた人物によるものが大きいと指摘されています。例えば両親の価値観に強く影響を受けている場合、Z世代でも現在の40~50代と近い感覚を持っていることがあります。
そのため、一概に「Z世代はこうだ」と決めつけることはできませんが、世代間の違いを理解し、相互理解を深めることが、職場環境の改善につながるとされています。
<引用>日本経済新聞:なぜZ世代は「容易に本心を見せない」と思われるのか(2022/11/8)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC042ZV0U2A101C2000000/
サブコンの現場に配属された若手社員が上記のように周りから「なにを考えているのか分からない」といった声はないでしょうか?コミュニケーション不足の課題があるなら、その解決法としてコーチングの活用があります。
現場サポートにおけるコーチングの事例
弊社シエンワークスが現場に赴き、サブコン様の若手社員の教育指導サポートを実施する際のコーチングを活用した事例をご紹介します。
新入社員A君の場合
A君は学生寮の新築現場で働き、朝礼・昼礼、日報など安全関係の書類作成、仕上げ工事に関する墨出し、施工写真の撮影などが主な業務です。
私が前回、現場に伺ったとき、「現場は慣れましたか?」と何気なく声かけしました。
ところが意外にも、彼から「仕事がパンパンで、自分の中で整理できていません」という答え。「それって、具体的にどんな状態か話してもらえませんか?」と私。
A君「今日やることは頭の中にあって、それをしていると、途中で急に先輩から頼まれ仕事を言われたり、建築の職人さんから質問されたりで、訳が分からなくなってくるんです」
私「どういう状態だったらいいですか?パンパンにならない状態っていうのは」
A君「自分の頭の中が整理されて、余裕を持って仕事ができている感じですかね」
私「なるほど、それができたらA君はどんな気持ちですか?」
A君「何か毎日、仕事に追われる感じがなくて、楽しく仕事ができそうな気がします」
私「いいですね。それでは、頭の中を整理する方法はどんなことが考えられますか?」
A君「う~ん、いつもメモは取っているのですが、何かこう頭の中というか、作業を見える化するといいのかなと」
私「それは、もう少し具体的に言うと?」
A君「そうですね。レベルブックに今日やる作業は朝一に書くんですが、優先順位がはっきりしていないのと、スケジュールが曖昧です」
私「では、どうしましょう」
A君「優先順位を決め、番号を振ります」
私「それから?」
A君「う~ん。それ以外は分かりません」
私「優先順位を付けた作業ごとに時間を割り振ったらどうですか?」
ここで、コーチングというより、助け舟を出し、ティーチングのモードになります。
私「午前中に1番と2番、午後に3番と4番、というように。その途中で他の急な仕事が入っても終わるように余裕を持たせましょう」
このやり取りでA君の表情がだんだんと明るくなり、何か気づきを得たのか、声のトーンも上がり、やる気が出てきたように感じました。
この事例のように、一人ひとりとコーチングを活用しながら対話し、社員の悩みや課題を聴き、心の中の声を引き出しています。そして、彼ら彼女らが自分の口から解決の方法やこうやってみようというアクションプランが出てくるような質問を繰り出しています。
今までのOJTは、やり方を教え、指示を出し、分からないことは質問するように、で終わっていました。このやり方では若手の育成は機能しなくなってきていることに、建設業界もそろそろ気が付いてほしいと願っています。
まとめ
上司世代と若手世代のコミュニケーション・ギャップはいつの時代にもあるかと思います。しかし、今後さらに深刻になる若手社員の採用難、人手不足から考えると放置できない問題となります。コミュニケーション不足が若手社員の離職につながり、成長を妨げるからです。
「建設業2024年問題」の人手不足の課題解決に、経営者、上司、人事スタッフにコーチングを学ばせる、あるいはコーチングのできる外部スタッフを活用するのも有効です。この機会にぜひ取り組んでみることが大切かと考えます。
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