お役立ちコラム

受水槽での水の事故例

建築設備の現場で起きる事故・災害は、ケガや熱中症などの疾病による労働災害と、漏水、結露、臭気、振動、騒音などが影響を及ぼす設備事故があります。
設備事故は工事施工中に起こるもの、竣工引き渡し後の客先からのクレームで発覚するものとありますが、どちらにしても未然に防ぐためにどうしたらよかったのかということをこの記事では皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
現場で経験の浅い担当者の方が、設備事故を起こさないようにするための方策をご紹介していきます。

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受水槽の清掃をしていたら床から水が

今回ご紹介する設備事故は、私がある市庁舎新築工事を担当していて、その竣工間際で起こった事例です。
この現場は総床面積が約30,000㎡で受水槽容量が確か80㎥あったと思います。
竣工間際だったため、受水槽内の清掃をしてきれいな水質状態でお客様に引き渡す必要があり、受水槽その他設備系清掃専門の協力会社にお願いして、水槽を清掃してもらいました。
竣工前だったこともあり、スタッフも全員試運転調整やら、検査前の段取り等で現場の中を走り回っている状況です。朝の清掃会社への作業指示や通行ルートの案内もそこそこに清掃作業が始まりました。
開始後2時間が経過したくらいの頃、作業員の一人が現場のスタッフに、「地下2階の機械室の床が水浸しになってるぞ」と知らせ、私の耳にすぐ連絡が入りました。現場に直行してみると、なんと、熱源機械室と隣の受水槽室の床に5cmくらい水が溢れている。それを見たとき、何が起きているか咄嗟には理解できませんでした。
その次の瞬間に「受水槽の水抜きだ」、やっちゃったかと頭をくらくらさせながら、スタッフ全員と近くにいた職人さんにもお願いして水カキを必死にやり、30分後には何とか水が床から引き、床置きの熱源機器にも影響なく、事なきを得ました。

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水の事故が起きた原因

この受水槽清掃での水の事故が起きた原因は何だったのか?直接的な原因は、受水槽室床下のピット内水中ポンプのON/OFFを電極棒で制御していますが、その制御電源がOFFになっていて、ピットの水位が上がってもポンプが作動せず、受水槽室とその隣の熱源機械室にまで水が溢れてしまった、ということでした。
受水槽には、試運転調整のために満杯に水が張られており、その水を一旦排水してから清掃するため、下部ピットに大量の水を排水したのですが、その水を制御電源が入っていなかったためにポンプアップできず、水を溢れさせてしまったということです。

設備事故を未然に防ぐには

今回の設備事故の反省点は、受水槽の清掃をするにあたり、そのことによって起こりうる状況を一連の作業の中で深く考えなかったという点です。
つまり、受水槽の清掃の流れを書き出してみると、
受水槽内に水が入っている場合、

1.ピットの排水ポンプの電源がONか、運転が正常か確認
2.電極の電源がONか、ポンプとの連動と制御がOKか
3.受水槽の水を排水し始める
4.ピット内の水位が実際に上がってきたらポンプが作動するか確認
5.正常に排水し終わり、受水槽がカラになったことを確認
6.受水槽の清掃を開始

以上のような手順になると思います。
このように、受水槽の清掃と言えども、メモでもいいので作業手順を書き出し、その項目の中に設備事故が起こる可能性がないかを一つひとつ検証していくことが必要です。
これをすることで今回の場合では、ピット内に水が排水されることが分かり、そこからその大量の水がきちんと排水されるかという疑問点が浮かび上がってきます。

改修工事の中で、ちょっとした給水配管の盛替え工事などでも油断せずに、作業手順を一通り書き出し、バルブの開閉や水圧試験、水出しなどの項目を詳細まで明記することで事故が起きる要素を洗い出し、それらを未然に確認することが設備事故を無くす基本の作業です。

まとめ

自分自身が体験した設備事故は、強烈に記憶に残っているので、水カキをしたときの状況が今でも鮮明に浮かんできます。忙しい竣工前のスタッフ全員の貴重な時間を設備事項が起こったことでムダにしてしまいましたが、その失敗事例こそが今後のスタッフの施工管理をする上での教訓になり、二度と同じようなことを起こさないための体験となったので、
実践上での「学び」になったと思います。
設備事故を起こさないために、事前の手順の確認と対策の計画を怠らないようにしましょう。

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宮本 一英
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【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)

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