建設現場の施工管理における人材不足が深刻化していることが、リクルートが公表した転職市場の報告書で明らかになりました。2022年度の建設業界全体での転職求人数は、4年前の約2倍に増加しており、中でも施工管理の求人数は2.5倍に達しています。
この人材不足の背景には、長時間労働による嫌気があるとされ、多くの施工管理経験者が他業界への転職を選んでいます。特に20代から30代の若手層が中心となっています。
この状況を受けて、中堅の建設会社では求職者に対する現場経験の基準を緩和し始めています。例として、大規模現場の経験や1級施工管理技士の資格要件の撤廃などが挙げられます。しかし、大手建設会社では採用基準に大きな変化は見られません。
その結果、大手企業間での施工管理経験者の転職は極めて少なく、労働環境の改善が見込めないことがその理由とされています。建設会社間での転職は、中小から大手、またはUターンで地方建設会社への転職が主流となっています。
また、2024年4月から始まる時間外労働の上限規制の導入により、人材流出がさらに進む恐れがあることも指摘されています。このように建設現場の施工管理職を中心とした人材不足は深刻であり、今後の転職市場や建設業界全体における影響が懸念されています。
<引用>日経クロステック:「施工管理の転職求人が4年で2.5倍に、人材不足の裏に「ブラック忌避」か」(2023.10.23)
次に、人材サービスを展開するウィルオブ・コンストラクションが実施した「建設業界での働き方改革に向けた残業規制の適用への準備状況と、それに対する従業員の意識」調査からの抜粋です。
この中で私が注目したのは、残業規制を歓迎しない理由として、「給与が下がる」が31.6%で最も多く、次いで「サービス残業が増える」が30.0%、「工期・納期が間に合わなくなる」が22.0%と続きます。特に20代から30代の若手社員の間では、サービス残業の増加や納期遅れに対する不安が強いことがわかりました。
<引用>AMP News:「建設現場の「残業規制」、約8割の現場社員が歓迎 一方で40代以上の現場社員は「歓迎していない」が半数を超える」(2023.11.30)
https://ampmedia.jp/2023/11/30/kensetsu-zangyo/
このように建設現場の施工管理における人材不足が深刻化しており、今後はさらに中途採用が難しい状況となっています。
次に調査からも20代から30代の若手社員のサービス残業の増加や給与減少への懸念が
浮き彫りになっています。この4月からの「2024年問題」、残業規制でその懸念が現実となれば、建設業界を離れる人材の流出がさらに加速されることとなりそうです。
せっかく建設、サブコン現場の施工管理を任せるまでに育った人材が次々と他業界に移れば、負のスパイラルが起こります。このような事態はなんとしても食い止めなければなりません。
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「建設業界2024年問題」とは?
「建設業界2024年問題」とは、2024年4月までに「働き方改革関連法」を完全に導入しなければならない課題を指します。この法律は大企業や中小企業に段階的に導入され、特に建設業界には5年の猶予がありました。主要なポイントとして、時間外労働に上限が設定(月45時間、年360時間が基本、特例で年720時間まで)され、中小企業でも60時間超の時間外労働には割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。違反時には罰則があり、建設業界にとって労働環境改善は切迫した課題となっています。これはサブコンにおいても重要なターニングポイントと位置づけられます。
サブコンの施工管理の人材を大切に育てる
今後は、サブコンの現場を支える施工管理スタッフが足らなくなっても、中途採用で補うことは困難と考えた方が良い状況です。会社を継続するためには、自社で施工管理ができる人材を育成し、辞めさせないことが重要となります。
一人前の施工管理の人材となるには、知識の習得と現場での実践トレーニングのみならず、現場をまとめるコミュニケーションスキルなど膨大な課題を乗り越える必要があります。
そのため、一人前になるまでは孤独にさせず、一人で悩まないよう、施工管理の豊富な知識と経験がある社内の先輩社員(メンター)を付け、個別指導する方法があります。そして、これにコーチングを組み合わせるのです。
コーチングとは、個人または組織が自身の潜在能力を最大限に引き出し、目標達成をサポートする方法です。このアプローチは、相手が自己認識を深め、解決策を見つけ、行動に移すことを促します。一般的に、コーチングは目標設定、問題解決、スキル開発、パフォーマンス向上に焦点を当てます。
コーチングでは、コーチは相手の話を傾聴し、質問を通じて彼らの考えや感情を探ります。これは、相手自身が持つ答えや解決策に気づくためのものです。コーチはアドバイスを与えるのではなく、相手が自身の問題を理解し、自らの力で解決策を見つけるよう導きます。
このように自分で解決する能力を身につけることが、施工管理ができる人材の成長を促進させます。
次に待遇面です。この4月からの残業規制で「給与が下がる」、「サービス残業が増える」といったことが起これば、大半の社員が将来に不安をいだき、安心して仕事ができる環境とはいえなくなります。このような理由で、希望を持って入ったサブコンの仕事に嫌気がさし、退職すれば、自社のみならず、業界を去ることは社会的な損失を意味します。
このように、入社した社員に対して大切に時間をかけて育成いくことが、サブコンの会社が存続できる一つのことと覚悟することが大切だと考えます。
まとめ
建設業界では施工管理の人材不足が深刻化しており、2022年度の転職求人数は4年前の約2倍に増加、特に施工管理職の求人は2.5倍に達しています。長時間労働への嫌気から20代から30代の若手の経験者が中心に他業界へ転職しています。
さらに調査からも、残業規制に対する不安が示され、給与減少やサービス残業増加への懸念が強くなっています。建設業界では、これらの問題により、中途採用が一層困難になり、特に若手社員の間での不安が高まっています。
そのため、サブコンの施工管理人材を育成することが、今後の課題です。
知識習得や実践トレーニングに加え、コミュニケーションスキルの向上が必要であり、社内のメンター制度やコーチングを活用することも重要です。待遇面の改善も必要で、4月からの残業規制で生じる給与減やサービス残業増加による不安を解消し、社員が安心して働ける環境を整えることが求められています。今、会社を存続させるために何が一番重要で喫緊の課題なのかを考える絶好のタイミングなのではないでしょうか。
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