2024年の時間外労働上限規制の導入に向け、地方の中小建設企業でも、労働時間の削減と効率化を目的とした新技術の導入が進んでいます。
これは大手企業が取り入れているAIなどの先端技術とは異なり、効率化を目指した独自の工夫が特徴です。例えば青森県の建設会社「萬齋」の事例です。道路建設で生コンクリートの表面を整える作業を機械化し、5人必要だった作業を2人で行えるようにし、特許も取得しています。
この機械は小型エンジンを利用し、前面に積み上がる生コンクリートを自動でかき分ける仕組みです。萬齋の齋藤社長は、大手の自動化技術と比較して、現実的な対策としてこれを開発しました。
日本経済新聞:「建設24年問題「もの言う下請け」へ 青森で脱・人海戦術」(2024.1.19)
建設業界ではこれまで時間外労働規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月から年間720時間の制限が設けられることになりました。これを受け、作業の効率化が不可欠となっています。しかし、青森県中小建設業協会の鉄会長は、中小企業にとっては高額なAIやICTの導入が困難であると指摘しています。また、人手不足の問題もあり、限られた人数での残業が現状です。
さらに、発注者側の工期設定や人件費の増加への対応も重要とされています。鉄会長は、中小企業が自助努力を進め、発注者に対しても意見を述べる「もの言う下請け」になる必要性を強調しています。これらの動きは、建設業界における労働環境の改善と効率化への取り組みを示しています。
<引用>日本経済新聞:「建設24年問題「もの言う下請け」へ 青森で脱・人海戦術」
(2024.1.19)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC180AF0Y4A110C2000000/
このように地方の小さな建設会社でも、限られた予算、高度な最新技術を使わず、創意工夫で効率を高める新技術を生み出しています。
このように新技術導入を可能にした背景として、人手不足が深刻化する中で、必要に迫られ、「今できること」に注力し、その現実的な解決策として生まれたのではないかと考えます。
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目次
「建設業界2024年問題」とは?
「建設業界2024年問題」とは、2024年4月までに「働き方改革関連法」を完全に導入しなければならない課題を指します。この法律は大企業や中小企業に段階的に導入され、特に建設業界には5年の猶予がありました。主要なポイントとして、時間外労働に上限が設定(月45時間、年360時間が基本、特例で年720時間まで)され、中小企業でも60時間超の時間外労働には割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。違反時には罰則があり、建設業界にとって労働環境改善は切迫した課題となっています。これはサブコンにおいても重要なターニングポイントと位置づけられます。
「今できること」の社員の育成が、サブコンの人手不足を解決する
冒頭の新技術導入の事例では、5人必要だった作業を2人で行えるといったわかりやすい即時性がある効果があります。一方で、社員を育成する投資は、時間がかかりますが、最も効果があり、効率的と考えます。
それは現状もサブコンの施工管理の大半が、機械化できない人間がやる頭を使った手作業です。そして新技術を生み出すのも、使うのも人間です。つまりは効率化のすべての鍵は人間なのです。
前回のコラムでも紹介しましたが、社員の育成の具体的な方法として、以下のことが考えられます。
1.責任を与える
社員に会社内でどのような経験をさせ、ポジションを与えるのかを明確化するのが重要です。それにより社員は自身の将来を具体的に描きやすくなり、モチベーションの向上につながります。例えば、若手社員にある工事(工種、工区)を任せ、責任を持たせることで、やりがいを見出させることが考えられます。
2.評価、フィードバック
定期的に個人の技術がどのレベルにあるのか、評価することが効果的です。
社員の現在の能力を把握し、必要な研修や支援を計画的に行うことで、個々の成長を促進します。特に、若手社員への早期の育成は、長期的な会社の安定に寄与します。
例えば、管理職や現場の上司が年2回の昇給面談のときだけでなく、少なくとも月2回の頻度で若手社員にフィードバックする機会を持つことが必要です。
3.能力向上
経験豊富な社員が若手社員を指導することで、彼らの能力向上と人間関係の構築を支援することも重要です。このプロセスは、経験豊富な社員にとっても自己の知識や経験を再確認する良い機会となります。
これは、社内に適任者がいないという場合は外部の機関を利用することも必要です。
4.部署間の異動
社内での異動やローテーションを積極的に行うことも推奨します。異なる部署や業務に携わることで、社員は多角的な視点を養い、柔軟な思考が身につきます。これは、将来のリーダーとして必要な資質を育む上で非常に有効です。
例えば、現場での適正が難しい人は設計に、あるいは施工図作成部署にいる人が現場勤務を希望する場合もあるかもしれません。
5.発表の場
人材開発においては、定期的なフィードバックの重要性も忘れてはなりません。目標に対する進捗状況や課題について、定期的に発表を行い、適宜、指導やアドバイスを提供します。これにより、社員は自己の成長を実感し、より一層の努力を促されます。新入社員の1年後の目標の発表であるとか、QC活動の結果発表など積極的に社内での自己成長の機会を作ることが求められます。
6.会社の意思統一
社員自身が自己成長の重要性を理解し、自主的に学ぶ意欲を持つことが不可欠です。そのためには、経営層からの明確なメッセージや、学びを促す企業文化の醸成が求められます。社員一人ひとりが自身のキャリアに責任を持ち、積極的に成長に取り組む環境を整えることが、人手不足や後継者問題の解決につながるのです。
例えば、社長や役員の方の経営陣から直接、会社のビジョンや向かうべき方向を社員一人ひとりに伝える機会が、これからのサブコンでは必要なことであると考えます。
これらの取り組みに対して、いきなりすべてのことに着手することは無理があるかも知れません。しかし、「今できること」に注力して、上記のやれることから少しずつ
取り組むことが大切です。
まとめ
「建設業2024年問題」は社員の育成を考える絶好の機会です。
「今できること」に注力して、やれることからすぐに社員育成に取り組みことが大切です。
これまでのやり方を踏襲するのではなく、社内や社外の知恵を集めて、再構築してみることが、人手不足を防ぎ、永続的な会社の明るい未来を築くことになるのです。
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