お役立ちコラム

建築設備の現場にアサーションを取り入れたら

「アサーション」という言葉をご存じでしょうか。
「アサーション」とは、コミュニケーションをする上でとても有効なスキルで、自分の気持ちや要望を相手に伝える権利を持ち、かつ相手の立場も尊重する、いわゆる「I am OK、You are OK」という考え方に基づいています。
建築現場、特に設備工事における現場での施工管理において、建築の職員や建築の職人さん、あるいはお施主さん、設計事務所、協力会社の職人さん、代理店、そして現場の上司、部下、自分の会社などなど、関わる人たちの上下関係や数は他の業界、職種に比べて多い方なのではないでしょうか。そんな建築設備業界での対人関係、コミュケーションで疲れている現場代理人や若い社員の方は非常に多いと感じます。
今回は、この「アサーション」のスキルを現場に取り入れてみたら、どのようにコミュニケーションを円滑にでき、仕事の効率が上がるか、と言うテーマでお話してみようと思います。

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現場の若手社員のコミュニケーション能力が不足している

弊社のサービスで「現場教育サポート」という、若手社員向けの現場でのマンツーマン指導というものがあります。これは、新入社員や入社2~3年目の方に、技術的な指導や施工管理の初歩的なこと、メンタル面でのケアなどを彼らの伴走役としてフォローしています。
彼ら、彼女らと話をしていて感じることは、新人は特にコロナ禍での人と関わる頻度が少なかったということも含め、仕事上での他人との会話の基礎的なことが十分にできていないという印象です。社会に出て間もない状況で、最初から周りの人たちと仕事の報連相が
上手にできることなど、まず難しいです。コミュニケーションが上手にできないという前提で、若手社員たちと接するという気持ちが必要だと思います。
例えば、新入社員のA君は躯体工事の段階で、大工さん、鉄筋屋さんにスリーブの件で
相談したのですが、A君の話の内容が不明瞭だったらしく、「何を言っているのか、よく分からん」と一蹴されてしまったとのこと。また、3年目のBさんは建築の職員と工程や工事内容の打合せをするのですが、その内容を上司に相談するとき、両方の意見の食い違いに悩むということがありました。A君とBさんの問題の本質に多少違いはありますが、2人ともコミュケーションのスキルを身につけていれば改善できるのでは、と思います。

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コミュニケーション能力はアサーションで身につけられる

アメリカの心理学者であるジョセフ・ウォルピ氏は、人間関係における自己表現には大きく3つのタイプがあると提唱しています。
1つ目は、「非主張的自己表現」。自分の考えを抑え、相手を優先するタイプ。本音が言えないため、相手に振り回され、ストレスがたまります。2つ目は、「攻撃的自己表現」。これは、自分を優先し相手の気持ちは無視し、自分の意見を押し通そうとします。そのため人間関係を悪化させてしまいます。3つ目が「アサーティブな自己表現」。これは、自分も
大切にし、相手も尊重するコミュニケーションをすることです。
では、アサーションを使ってどうやって現場でのコミュニケーションスキルを高めるかを、
2つの例で考えてみましょう。

1.A君の場合

前出のA君の躯体職との会話を、アサーションを使うとどうなるでしょうか。
おそらく、A君は建築の躯体職に声をかけるとき気が引け、自分の伝いたいことが思うように口に出せなかったのではと推測できます。この場合は、立場の上下関係は脇に置き、
「この壁はいつ頃建ちますか?壁にスリーブの墨出しをしたいのですが、」
「あそこのスラブ配筋の上に乗っていいのはいつですか?床にスリーブを入れたいのですが」というように、まず相手に聞きたいことや伝えたいことを言い、その後ではっきりと自分がしたいことを言っています。

2.Bさんの場合

Bさんは、建築と上司の意見の食い違いの間に挟まれ、苦悩しているという状況でした。
この場合は、Bさん自身が建築と上司のそれぞれと打合せで会話するときに、自分としてはどうしたいか、どうするのが正解かということを自分なりに考えることがまず必要かと思います。経験が少ないということもありますが、主体的に考えてみること。そのうえで、
「建築さんのご意見は理解できますが、設備としてはこの理由でこうしたいのですが」
あるいは、上司の意見が建築に対して否定的な場合、「建築の意向も尊重して、このようにしたいと思うのですが。いかがですか」というように、自分の意見、または自分がこうしたいということを両者ともに、投げかけてみるということがアサーションを使った対応になります。

アサーションで得られる現場での効果

現場は特に、自分の工事や工程の都合を優先で考えてしまう傾向にあり、建築に押し切られて工程が進んでいくという、設備にとっては難しい職場と言うのは否めません。
だからこそ、アサーションを意識し活用することで、ひとつの現場の限られた工期の中で短期間ではあるけれど、関わる人とのコミュニケーションが取れ、いまよりもっと工事がスムーズに進むようになると思います。

まとめ

今回は、「アサーションを現場に取り入れてみたら」と言うテーマを取り上げてみました。
自分も相手も尊重し、自分の意見を伝えるということが現場でできているという人は、なかなかいないのではないでしょうか。設備に身を置く人にとって、やはり建築に対しては
自分の希望をはっきりと口に出せない状況も多いでしょう。しかし、このアサーションの意味を理解し、意識して会話をすることで、今までとは違うあなたが生まれ、相手も違った目であなたのことを見始めると思います。ぜひ、トライしてみてください。

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ABOUT ME
宮本 一英
株式会社シエンワークス 代表取締役

首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(研修・現場教育支援・コーチング)を提供しております。大学卒業後、35年間中堅サブコンにおいて現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「売上・利益の向上」を支援しています。

【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者/コーチング資格(GCS認定コーチ)

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