最近話題になった新人研修として、5日間1人旅の研修プログラムを行った山陰の家電メーカーの例があります。社長が導入したこのプログラムは、「青春18きっぷ」を用い5日間の日程を自分で計画し、1人旅をするというものです。
これのより、新人社員は、異なる地域や人々との交流を通じて視野を広げ、人生経験を増やすことを目的としています。
この背景には、就活生から最終面接のときに多く寄せられた『入社までに何をしたらいいですか』という質問に、社長が『旅に出よ』と言い続けてきたことにあります。これは「いろいろな景色を見て、人と出会い、自分の幅を広げてほしい」との
思いです。会社の新人社員には高卒が多く、1人で飲食店に入った経験すらない人も多いことがあるそうです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230302/k10013995791000.html
(参考記事)
これまでの定型の研修といったものだけでは、新人育成に限界を感じた企業は様々な取り組みを行っています。
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目次
「建設業界2024年問題」とは?
「建設業界2024年問題」とは、2024年4月までに「働き方改革関連法」を完全に導入しなければならない課題を指します。この法律は大企業や中小企業に段階的に導入され、特に建設業界には5年の猶予がありました。主要なポイントとして、時間外労働に上限が設定(月45時間、年360時間が基本、特例で年720時間まで)され、中小企業でも60時間超の時間外労働には割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。違反時には罰則があり、建設業界にとって労働環境改善は切迫した課題となっています。これはサブコンにおいても重要なターニングポイントと位置づけられます。
これからサブコンで求められる新人教育とは?
残業規制の強化が進む中、サブコンでも働き方の改革が不可避となりました。特に新人教育においては、時短と効率化を図るための新しいアプローチが求められます。
1.効率的な技術伝承
新人に対しては、経験豊かなベテラン(上司)が技術を効率よく伝承するマニュアル(システム)を確立する必要があります。現場での失敗を繰り返すことで、痛い思いをし、その経験が技術として身についていく、というのが今までのパターンでした。しかし、これからの時代は、新人が育っていく過程にそんなに時間をかけていられないのが実情です。
そのためには、ミスを未然に防ぐための事前の知識の習得が必要です。現場で上司がその場面場面ごとに説明をするのも手間と時間がかかります。それを省力化するために例えば、作業手順や建築工程の流れの中での設備工程の位置付け、工事ごとの注意事項やチェックポイントなどを記載した簡潔なマニュアルを作成しておく、などです。
また、社内で設備事故事例集を積み上げていき、それを全社員が共有することで、新人にも「こういう事故が起きるから、このポイントを注意しよう」といったことを伝えることもできます。
2.メンタルケアの徹底
長時間の労働が減る中で、新人が短時間で多くの現場の知識や設備の技術を吸収しなければならないプレッシャーを感じる可能性があります。メンタルヘルスを保つための研修を開催したり、メンタルケア専門家と連携してフォローアップをしていくことも新しい取り組みとして取り入れてみてはいかがでしょう。現場の業務に、精神的にも体力的にも疲弊している現場員にとって、人に話を聴いてもらうことが問題解決のきっかけになることもあります。
3.スキルの特化と多様性
サブコンにおける多様な職種の中で、新人がどの道を進むかによって必要とされるスキルが異なります。専門スキルの習得を促す一方で、他職種と連携しやすくする基礎的スキルも教育しましょう。例えば、新築工事専門のスキルを教育する一方で、改修や営繕工事の技術的な知識や施工管理のノウハウを教育する、あるいは専門が空調工事の場合、電気工事の知識の習得の機会を設けるなど、会社の事業形態に応じた多様なスキル教育の場が求められます。
4.カリキュラムの見直し
技術進歩や働き方の変化を反映させ、カリキュラムを柔軟にアップデートしましょう。
新入社員、入社2年目、入社3~5年目のように、経験年数に応じてカリキュラムの内容を、社員のスキルの習熟度具合に沿って都度アップデートすることで、若手社員の実態と教育のミスマッチが起こりにくくなります。
5.コミュニケーションスキルの向上
コミュニケーションが現場組織内で適正に行えれば、工事はスムーズに進捗し、余計な残業を抑制することが可能です。残業時間が発生する要因のすべてがコミュニケーション不足によるものではありませんが、コミュニケーションがきちんと取れている、
会社↔現場責任者↔現場スタッフのそれぞれの関係性が良好であれば、半分以上の残業時間は削減できると、実際のサポートをさせていただいているサブコン様を見ていると感じます。
これらのポイントをすべて社内の現場の上司や先輩、人事部員が担うことは実際には不可能に近いことでしょう。社外スタッフを活用して、新人教育を支援する仕組みが必要と考えます。
新人教育が会社の未来を創る
これから求められる法令遵守の環境で、残業を減らしながら人材を育てることは難易度の高い課題となります。しかし、中途での若手、中堅社員の採用が一層困難となっていく時代に、この新人教育の再構築をやり抜くことが、会社の未来の明暗を分けることになるかも知れません。彼ら、彼女らが次世代の現場を牽引するリーダーになることこそ、企業を持続可能に発展させるための支えになるのです。
まとめ
「建設業2024年問題」は、サブコンにおいて、本気で取り組む必要がある緊急の課題です。
一方で、即効性のある対策もないのが実際です。
この問題を「社員が働く環境をいかによくするか?」という問いに対して、会社全体で考える絶好の機会と前向きに捉え、やれることから一歩ずつ早期に実行してみることが重要であると考えます。
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