人材育成はコストではない。2026年版中小企業白書から考える建設会社の「稼ぐ力」

2026.08.17

自社の強みを生かし、価格競争から抜け出して利益を増やす

今回のテーマは「2026年版中小企業白書が示す強い会社」です。先日2026年版の全文が発表され、今後の中小建設会社の方針に活かすべき内容が記載されていました。そのポイントを説明します。

まず中小企業も賃上げが進む中、原資確保が急務だということです。大企業と比較して余力がない中、いかに稼ぐ力をつけて、他社に負けない持続した賃上げを行う必要があるのです。

そして、白書の中で「稼ぐ力」とは、「付加価値を継続的に生み出し、利益を確保しながら持続的に成長する力」を意味しています。単に売上を伸ばすことではなく、「利益を生み出す力」を高めることが重要だとしています。

これを建設会社に置き換えると、「稼ぐ力」とは以下ようになると考えます。
・利益率の高い工事を受注する力
・適正な価格で受注し、価格転嫁する力
・業務改善やDXによって生産性を高める力
・人材を育成し、一人当たりの付加価値を高める力
・顧客から選ばれ続ける技術力・提案力・信頼を築く力

つまり、売上が100億円あっても利益が出なければ「稼ぐ力」が高いとは言えません。
一方、売上が同じ程度でも、無駄を減らし、付加価値の高い仕事を増やして利益を安定的に生み出している企業は、「稼ぐ力」が高い企業と評価されるのです。

そのためには、白書では経営者自身が経営や人材育成、DXなどを学び続け、その学びを経営改革へ生かすことが求められるとあります。

また、人材育成をコストではなく将来への投資と捉え、教育や人事制度を充実させることで、社員の成長と企業の競争力を高めることが重要です。さらに、自社の強みを生かせる分野へ経営資源を集中するとともに、業務の標準化やDXを進めて働き方改革を実現することが、収益力の向上と持続的な成長につながるとしています。

<引用>
「2026年版「中小企業白書」全文」:中小企業庁(2026/7/17)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/chusho.html

経営者自らが学び、建設会社の「稼ぐ力」を高めた事例

白書の中で、上記の内容を実践している建設会社の事例として、株式会社内池建設と東陽電気工事株式会社の2社が紹介されています。

株式会社内池建設(北海道室蘭市)は、公共工事への依存や価格競争による低収益、長時間労働などの課題を抱えていました。そこで30歳で社長に就任した内池社長は、「会社を変えるには、まず経営者自身が学ぶことが必要」と考え、中小企業診断士の資格取得をはじめ、経営、財務、マーケティング、ITなどを積極的に学びました。そして、その知識を生かして公共工事中心の経営から利益の大きい物流施設や工場建設などの民間市場へ事業に転換しました。そして、営業管理や施工管理へのDXを推進し、生産性向上と提案力の強化を実現したのです。その結果、売上や利益が大きく伸びただけでなく、残業時間の削減や社員の平均年収向上も達成し、業績向上と働き方改革の両立を果たしました。

一方、東陽電気工事株式会社(福島県西郷村)は、トップダウン型の組織運営や人材育成の仕組み不足という課題を抱えていました。石川社長は、自ら経営や組織マネジメントを学び、人事制度や教育制度を全面的に見直しました。社員に求める役割や評価基準を明確にし、計画的に人材を育成できる仕組みを整えるとともに、約2,000万円を投じて実践的な研修施設を整備しました。その結果、従来は3~5年かかっていた現場戦力化を約4か月まで短縮し、人材育成を経営戦略の中心に据えた企業として高く評価されています。

両社の事例に共通しているのは、「人手不足だから人が育たない」のではなく、「経営者が学び、育成の仕組みを整えることで、人も会社も成長する」という考え方です。

白書は、建設会社が持続的に成長するためには、技術力や設備投資だけでなく、経営者自身の学びを起点として、人材育成、DX、組織改革を一体的に進めることが、「稼ぐ力」を高める重要なポイントであると示しています。

まとめ

経営者の視点で見ると、人材育成は「人手不足への対策」ではなく、「会社の稼ぐ力を高めるための戦略」です。

建設業では、優秀な人材を採用することが難しくなっています。だからこそ、採用だけに頼るのではなく、今いる社員の技術力や提案力、マネジメント力を高め、一人当たりの付加価値を上げることが重要です。社員が成長すれば、より難易度の高い工事を任せられ、品質や生産性も向上し、結果として利益率の高い仕事を増やすことができます。

そのためには、現場で「見て覚えろ」と教えるだけでは不十分です。会社として教育制度や評価制度を整え、社員が何を学び、どのように成長すればよいのかを明確にする必要があります。また、まず経営者自身が学び、その考え方を組織や事業の改革につなげることも重要です。

人材育成に投資することは、短期的にはコストに見えても、長期的には生産性と利益を生み、賃上げの原資をつくる投資です。 これからの建設会社は、「人が足りないから採用する」という発想から、「人を育てて、一人当たりの付加価値を高める」という視点へ転換することが求められています。

弊社、シエンワークスでは、建設業に合った「人材育成プログラム」を提供しています。詳しい内容をお知りになりたいという方は、下部の「お問い合わせはこちら」からご連絡ください。無料相談を実施しております。

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著者プロフィール

宮本 一英

宮本 一英

株式会社シエンワークス 代表取締役

首都圏・関東周辺を対象に『サブコン専門 人材育成支援サービス』(現場サポート・現場巡視・集合研修)を提供しております。35年間現場管理一筋で培った経験を活かし、サブコン様における「人材の育成・成長」「離職率の低減」「安全・品質の向上」を支援しています。

【資格】建築設備士/1級管工事施工管理技士/消防設備士(甲種1類)/空衛学会設備士(空調・衛生)/給水装置工事主任技術者