設備屋を長年やっていた自分の経験からすると、水にまつわる事故は数多く起こり、苦い思い出として心に残っている。
水の事故で思い出すのは、竣工間際の現場で受水槽の清掃をするために、一旦溜めた水を下部のピットに排水していたときのこと。
受水槽の排水バルブを開いた係員が本来あってはならないことだが、その場を離れ1時間以上は現地に戻ってこなかった。その場に誰か職人が一人でも作業していたら、すぐに異変に気付いたはずだが、運悪くそのときは誰もそこにはいなかった。
たまたまそこに通りかかった内装の作業員が、建築事務所に連絡を入れてくれ、現場に駆け付けたら、受水槽室とその隣の熱源機械室の床が水びたしになっており、一瞬血の気が引いた。とっさに水中ポンプが故障か、何かの理由でピットの水が汲み上げられていなかったかと思ったが原因を究明するより先に、とにかく受水槽の排水バルブを閉め、床の水を何とかしなければならない。
受水槽下のピットは満水だが、隣の熱源機械室の下部ピットは問題ないので、社員総出でそちらに水を落とし、30分くらいかけて水かきをした。
不幸中の幸いで、電気関係には影響が無かったため事なきを得た。
原因を後で確認したが、電極の動作不良だった。これは直接の原因だが、今回の設備事故の本当の原因は、竣工前で機器類の動作確認もままならない段階で、受水槽の排水バルブを開け、排水し数分経った段階で水中ポンプが正常に作動し、水位が下がるかの確認を怠ったことによる。この確認ミスが大きな事故につながるので、注意が必要だ。
安全面での労災事故でもしかり、設備事故でもしかり、事故が起こる原因はヒューマンエラーがほとんどだ。手順をきちんと守り、その一つひとつの手順に沿って確認を怠らないという意識で現場管理すれば、事故は起こらないと思う。
この漏水というか溢水事故は、苦い思い出だ。