目次
離職が止まらない
建設業の離職率の現状を調べてみました。
ヒューマンリソシア株式会社が、建設業界での新卒者の早期離職率の厚生労働省が提供する公式データに基づいた報告書からの抜粋です。
下記のデータは、大学新卒者の就職後3年以内の離職率28.0%は、全産業平均と比較すると低いですが、製造業と比較すると高くなります。
高校新卒者については就職後3年以内の離職率42.7%は他産業と比較しても高い水準です。
【 2018年3月の大学・高校新卒者の就職後3年以内の離職率】
<引用>ヒューマン:「最新データからみる、建設業界新卒者の離職率の実態」
(2021.11.22)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001239.000005089.html
このデータから建設業に入った大卒者の約3割、高卒者の約4割が3年以内に離職していることがわかります。つまりは一人前の戦力となる前に多くが辞めているのです。これでは穴のあいたバケツのような人材流失の現状がわかります。
次に若年離職者の辞める理由を調べてみました。
国土交通省の資料によると、そもそも企業側と実際の離職者の間に大きな認識のズレがあることがあるようです。企業側は「作業がきつい」「若者の意識が低い」と見ているのに対し、実際に会社を辞めた若者は「雇用の不安定さ」「遠方作業所への移動負担」「休みが取りにくい」といった労働環境を離職理由として挙げており、給料の問題は4位になっています。
クラフトバンク 作成
「建設業の働き方として目指していくべき方向性(参考資料)」 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001171558.pdf
「実は若者世代が増えている建設業。誤解だらけ「人手不足」の本当の理由」
ビジネスインサイダー(2023/12/3)
上記は職人を含めた調査であり、サブコンの施工管理の社員には該当しない「雇用が不安定」といった離職理由もあります。今回は若年社員の離職者本人からの理由上位を上げてみました。
遠方の作業所が多い
移動時間を含めた長時間の拘束が「きつい」と感じさせる理由となります。
会社は、地域性を考慮し、なるべく社員の自宅から近い現場を選び現場の配属を決めますが、限られた社員数の中で、現場の発生する時期や配属されている社員の現在の配置状況などから、なかなかすべてが近距離の現場という訳にはいかないのも実状です。
休みがとりづらい
建設業界は人手不足により一人当たりの仕事量が増加し、休みが取りづらい状況にあります。この人手不足は、長時間労働や少ない休日、天候や資材納期の遅延によるスケジュールの厳しさから休日出勤が増える一因となっています。特にサブコンの後工程で働く部門は、工期延長の影響を受けやすいこととなります。
労働に対して賃金が低い
賃金については、不規則な労働時間や肉体的な負担を考えると、見合わないと感じることがあります。特に長時間労働を強いられる場合、時間給換算で賃金に不満を感じるケースがあります。
建設業、サブコンの激しい人材流失が続く現状の問題点は、離職の3大理由の「遠方の作業所が多い」、「休みがとりづらい」、「労働に対して賃金が低い」であることがわかりました。
サブコンの現場で人材が育たない
サブコン現場で人材が育たない理由について説明します。
現場単位でのOJT教育
これは、実際の業務を通じてスキルや知識を習得するOJTの本質が生かされていないことを意味しています。理由としては、教育する体系や計画が整っていない、または現場の忙しさにかまけて、教育が後回しにされがちであることなどが考えられます。また、部下の社員にとって、入社後数年同じ現場の同じ上司に就いたとき、その上司の教育方法によって成長が左右されてしまうというリスクもあります。
「自分で仕事を覚えろ」という教育法
現場の上司が、昔ながらの「自分で仕事を覚えろ」という教育法で育っているため、その教育法を受け継いでしまっていることもその理由です。このアプローチでは、個々の自己解決能力は養われるかもしれませんが、効率的なスキルの習得や最近の多様な業務に対応するための知識の共有が不足しがちです。
上司が部下を教育し、成長させようという意識が希薄
これは会社の文化や価値観に根差した問題であり、上司による積極的な教育やメンタリングの重要性が認識されていないことにあります。また経営者が、部下を管理職が教育することを充分に評価していないことが原因として考えられます。
施工管理業務の専門性が高く、育成に時間がかかる
現場責任者レベルのスキルを習得するまでに最低5年はかかります。
この長期にわたる学習期間は、継続的な学習意欲や環境の維持が不可欠であり、そのための支援体制が不足している場合、人材の成長が阻害されます。
これらの要因を踏まえ、建設現場での人材育成を促進するためには、OJTの体系を整え、教育に対する上司の意識改革、教育プログラムの充実、長期的なキャリアサポート体制の構築などが求められます。
新卒、中途採用が難しい
新卒の建設技術者の採用状況を調べてみました。
ヒューマンリソシア株式会社の建設技術者の人材動向に関する調査報告からの内容です。この調査は、建設業界における人材の不足と高齢化に焦点を当て、特に大学や大学院を卒業した新卒者が建設技術者として就職する動向分析をしています。結果から、建設技術者を目指す新卒就職者数は10年間で1.4倍に増加しているものの、近年2年間の増加率は停滞していることがわかりました。
また、建設技術者として就職する女性が増え、直近10年間で2倍以上となり、平均増減率は7.4%増となりました。
この調査は、文部科学省の「学校基本調査」のデータを基にしており、建築・土木・測量技術者への就職者を建設技術者として集計しています。建設業界では、就業者数の減少と高齢化による厳しい人材不足が続いており、2030年には約4.5万人の建設技術者が不足すると予測されています。
調査結果は、新卒就職者の増加や女性就職者の増加が明るい材料である一方で、65歳以上のシニア層が建設技術者の約2割を占め、今後の人材不足が懸念される点で不安を残しています。
<引用>ヒューマン:「建設技術者への新卒就職動向レポート」(2024.3.12)
https://corporate.resocia.jp/info/news/20240312_construction_02
次に中途採用の状況です。リクルートが公表した転職市場の報告書からの内容で、2022年度の建設業界全体での転職求人数は、4年前の約2倍に増加しています。特に施工管理の求人数は2.5倍に達しています。
この人材不足の背景には、長時間労働による嫌気があるとされ、多くの施工管理経験者が他業界への転職を選んでいます。特に20代から30代の若手層が中心となっています。
また、時間外労働の上限規制の導入により、人材流出がさらに進む恐れがあることも指摘されています。このように建設現場の施工管理職を中心とした人材不足は深刻であり、今後の転職市場や建設業界全体における影響が懸念されています。
<引用>日経クロステック:「施工管理の転職求人が4年で2.5倍に、人材不足の裏に「ブラック忌避」か」(2023.10.23)
このようにサブコンの採用環境は、新卒の就職者や女性就職者の増加があるものの、業界が必要とする求人数、高齢化が進む現場を変えるまでには至りません。中途採用に関しては、特に現場を支える施工管理職の求人数が急増しています。一方で施工管理経験者が他業界へ転職を望む傾向があり、今後も人手不足は続くこととなりそうです。
管理職が若手社員教育に時間が取れない
サブコンにおいて、現場の管理職が若手社員の教育に十分な時間を割けない理由には、複数の要因があります。主な理由としては、上司自身がプレイングマネージャーとしての役割を担っていることが挙げられます。この役割において、彼ら自身が現場の施工管理に深く関わり、その結果として多くの時間を現場業務に費やさざるを得なくなります。
建設現場では、プロジェクトの進行上、多くの緊急性が求められる作業が発生します。このような状況下では、管理職は現場プロジェクトの成功を最優先し、施工の品質、安全、そしてスケジュール管理に注力する必要があります。こうした責務は、管理職にとって時間とエネルギーを大量に使うため、若手社員への教育に割く余裕が少なくなってしまいます。
また、建築現場ではプロジェクトごとにチームが組まれることが多く、一つのプロジェクトが完了するとすぐに次のプロジェクトへと移行する必要がある場合がほとんどです。このようにプロジェクトの連続性が高い業界特有の環境も、管理職が教育に専念する時間を作り出す上での障壁となっています。
この問題に対処するためには、教育のための時間を確保するだけでなく、教育方法そのものを従来のOJTから見直す必要があります。さらに、管理職自身が教育に専念できるよう、タスクの委譲やチーム内での役割分担を見直すことも一つの解決策となります。
労働環境の問題
サブコンにおける施工管理者は、その労働環境において、幾つかの課題に直面しています。一つ目は、残業時間の多さです。この業界はプロジェクトの納期や突発的な問題への対応が必要とされることが多く、現場従事者たちは長時間労働を強いられる傾向にあります。また、「3K」と呼ばれる「きつい、汚い、危険」という特性を持つ作業環境も、この業界の大きな課題の一つです。これらの厳しい労働条件にも関わらず、給料が業務の負荷や時間に見合っていないと感じる声も少なくない現状があります。
さらに、サブコンの作業現場は女性が働きやすい環境とはまだ言い難い状況にあります。物理的な作業や、昔からの男性が多数を占める職場文化が、女性が入りにくく、または活躍しにくい環境を作り出しています。今後は環境整備を進めながらで、女性が会社の中でのキャリアアップを支援する必要があります。
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