今回は、一度は退職を考えていたBさんが、サポートを受ける過程において退職を思いとどまり、この会社で働くことを選択した事例です。
Bさんが考えていた退職について
Bさんは入社5年目で、途中で1年ほど会社の設計部に配属になり、現場経験が4年の若手社員です。彼は責任感が強く、任された仕事は残業をいとわず積極的に取り組むタイプです。
その彼の指導を依頼され、私が担当することになりました。
彼には入社2年目の部下が配属されていましたが、Aさん自身部下を持つことが初めてのうえ、自分自身の知識もスキルも未熟で、自分の仕事のことで手一杯なのに、果たして自分に部下指導ができるのだろうか、という不安がありました。
指導を始める段階で、私はBさんに彼の現在の心境や仕事に対する悩みについて、話を聴きました。
「今後はどのようにスキルアップしていきたいですか?」という質問をしました。
彼が返してきた言葉が、
「今、この仕事に疑問を持っているんです」
「それは、どういうことですか? もう少し詳しく聞かせていただけませんか?」と私。
Bさんの心境は、建築との打合せで上手く自分自身の主張ができず、いつも建築に押し切られてしまう。そのため建築の工程に左右され、設備工程に無理が生じ、手戻り作業が増え、それが原因でいつも残業している状態が続いている。
自分は業務を進めるうえでのコミュニケーションが苦手で、また残業が多い今の会社にこのままいることに悩んでいるとのことでした。
また、地元が岡山なので、出来れば若いうちに公務員試験を受け、合格したら安定した公務員になり、地元に帰りたい、とも話していました。
Bさんの悩みを分析し、対策を考える
Bさんの話を受け、私は彼の悩みのポイントを整理してみました。
彼は、おとなしい性格で自己主張が苦手なタイプです。
建築との工程についての打合せで、自社の工事の工程を主張できず、相手の言いなりになって呑み込んでしまう状況が多々ある。それが原因で業務が増え残業が多くなってしまっている。
つまり、交渉能力が向上し、工程が順調に進めば、残業も減りストレスが減少する、ということになります。残業の原因がそのことだけではないとは思いますが、精神的なストレスの大半は、どうやら彼の交渉能力、コミュケーション能力にありそうです。
Bさんの気持ちを変えたシエンワークスの現場支援
私はBさんに、交渉力における2つのポイントとなるキーワードを提示しました。
「シンプルに伝える」と「アサーション」の2つです。
Bさんに必要なのは、話を相手に伝えるときに、いかにシンプルに簡潔に伝えるかということと、いつも相手に物事を譲ってしまうのではなく、「自分も相手も大切にする自己表現」の2つのことを身に付ける、そして意識するようにするということだと考えました。
1)シンプルに伝える
Bさんと会話しているときに感じるのは、彼の話の内容は聞いている側からすると、理解できない部分が多く、頭の中で映像が浮かんでこない、モヤモヤ感がある場合が多いということです。これは、彼の話の組み立て方に問題があるのでは、と思いました。
つまり、相手に話す前に自分の話したいこと、伝えたいことが彼の頭の中で整理できていないのでは、ということです。
そこで、私は彼に、
①まず、結論を言う
②次に、その結論に至った根拠、理由を言う
③最後に、その根拠の周辺の事象をまとめて言う
この3つの手順を頭で描き、この手順に沿って、話を組み立ててみましょう、とアドバイスしました。
普段のBさんは、自分の感情が先に来て、その周りの言い訳じみた事柄で回りくどく話していたため、要領を得ない印象でした。
この3つの手順をいつも念頭において会話するように意識したBさんは、少しずつ話し方に自信がついてきたように感じました。
参考書籍:「1分で話せ」伊藤羊一著
2)アサーション
Bさんの性格は、相手を立てて大切にしていても、自分から自己表現の選択をせず、言いたいことを引っ込めて相手の言う通りに従う、というタイプです。
アサーションとは、アメリカで生まれた「自分も相手も大切にする自己表現」という意味を持つコミュニケーションの考え方です。
Bさんのようなタイプは、このアサーションという考え方を理解することで、コミュケーションの取り方が変わってくるのでは、と考えました。
アサーションの第一の考え方は、「私たちは誰もが自分らしくあってよい」ということ。つまり、誰でも自己表現の権利があるということです。
第二に、「自分と相手、いずれも大切にするやり取り」を心がけること。
例えば、建築から「厨房の材料、今日中に片づけておいてほしい」と言われたとします。職人はみんな忙しく片づける余裕などない状況で、いつものBさんなら、自分ひとりで残業しながら、片づけをしていたでしょう。
もし、アサーションの考え方を取り入れるなら、まず建築には「今、職人が忙しく手が回らないので、一日延ばしてもらえませんか」と交渉しつつ、職人には、「厨房の材料を移動してもらえませんか?新入社員と僕も手伝うので、明日中にお願いします」というような感じです。
対処法はいろいろあります。そのときの建築の一言に反応し、考えずに行動してしまうと、自分が損をしてしまいます。
参考書籍:「マンガでやさしくわかるアサーション」平木典子著
この「シンプルに伝える」と「アサーション」を意識して、相手と会話したり、交渉の場に臨んで自己表現することを心がけたところ、少し彼の周りに変化が起き始めました。
それが上司であったり、職人さんであったり、あるいは建築の担当者であっても、「B君、何か変わったんじゃない?」という声が聞こえ始め、みんなのBさんを見る目が変わってきました。明らかに彼は以前よりも、自己表現と自己主張ができるようになってきました。
Bさんのその後とこれから
少し元気が出てきたBさんに、「その後、状況はいかがですか?」と聞いてみたところ、「あれから、ご指導いただいたことを意識して相手と話したり、交渉したりするうち
に、だんだん自信がついてきました。何か仕事に対するモチベーションが上がってきたような気持ちです」と答えてくれました。
こういう言葉をいただくことが、この仕事をしていてよかった、と思える瞬間です。
Bさんは会社を退職することを一旦見送り、この仕事でもう少し自分の力を試してみたいと言ってくれました。
彼の次の現場は、大規模新築現場で次席として頑張って働いています。
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